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富を再生産する富裕層たち

NEWS BLOG 2018.12.24

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 アメリカの個人消費支出統計(Consumer Expenditure Surveys )によると全米の上位1%富裕層は2007年以降、モノ消費は減少傾向が続いています。ではアメリカのお金持ちはいま何にお金を使っているのかといえば、教育やリタイアメントライフ、健康。すでにモノ消費からコト消費へ、とのシフトが言われてから久しい日本でも、この傾向は近いのではないかと思います。

  まず教育。かつてインタビューした東京都港区在住の富裕層の方は、未だ1歳にもならないお子さんを7つの塾に通わせている。それは教育こそが、確実に富を継承することのできるものであるとの確信があるから。

  「王様の学校」といわれるスイスのボーディングスクール、ル・ロゼを訪れた時のこと。未だ5歳くらいのアジア系の女の子を見つけ、日本人かと思って日本語で話しかけてみました。きょとんとしていたので、今度は英語で話すも通じず。それで、おそらくは韓国の財閥系のお子さんあたりだろうかと推測したのですが、世界の成功者や代々続く富裕層は教育には惜しみなくお金を使っています。

  アメリカの話に戻すと上位1%富裕層が教育にかける費用は、全米平均の860%以上であるとか。前述したスイスのボーディングが学費、寄宿費、寄付や交通費、もろもろ考えると1人年間1000万円くらいはかかることを考えれば、さもありなんです。加えてアメリカの上位1%は、学費だけでなく、子弟の健康管理のパーソナルサービスにお金を使ったり、ガラパゴス諸島へ旅行に連れて行ったりしている。

  モノ資産よりも文化資産を伝承し、ファミリーの健康を維持管理してこそ、富を再生産することにつながると考えているからでしょう。健康については、このニュースブログで以前お伝えしたように(ステータスシンボルは健康です)、今や富裕層のステータスシンボル。ファッション誌のVOGUEでも、2015年の段階で「健康とウェルネス」をラグジュアリーステータスシンボルと書いています。

  ではモノ消費はどうなるのかというと、これもやはり再生産できる文化的資産と考えて消費するのが富裕層の傾向になっています。時計でも車でも、リセールバリューのあるものを買い求めるのが本物の富裕層。この傾向はいまどきの若い富裕層のほうが、強くなっているように感じます。

  地球が飽和状態になってきて、サスティナブルな社会を維持することが世界のテーマになっているからこそ、モノを買っている自分も、「これは未来に伝承できる文化に投資しているのだ」というマインドになれるような消費が、これからの富裕層のモノ消費を推し進めるだと思います。

  教育と健康への投資によって富裕層は、自らのDNAを持続可能なものとし、富を再生産したいと考えるのでしょう。

参照サイト:CPP-LUXURY

cover photo:Paul K  Boarding School Education or the Frenchified Young Lady 1771 (M Darly – Walpole)
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