海外不動産インタビュー - 1トランプタワーは日本人が約7割
Luxury Marketing Interview 2017.01.20
世界のオークションブランド、サザビーズの不動産部門として1976年に設立された「サザビーズ・インターナショナル・リアルティ®」を日本で展開するのが、リスト サザビーズ インターナショナル リアルティ。 日本人に人気のハワイ不動産を中心に海外不動産を販売する同社の大橋 登さんにオアフ島を中心としたハワイ不動産の現況、日本の富裕層ではどういう方がハワイのラグジュアリー不動産を購入しているのか、最新のマーケットを伺いました。
第1回 トランプタワーは約7割が日本人オーナー >第2回 ハワイ、そして世界の不動産
- 栗原
- ちょうど明日、トランプさんが大統領就任ということで、今日はまずは旬のトランプタワーについてお伺いしたいと思います。
- 大橋
- そうですね。 トランプタワーは旬になってます(笑)。
- 栗原
- サザビーズさんではトランプタワーの販売はされているのですか?
- 大橋
- はい、販売しています。われわれはオアフ島以外のエリアで、シンガポール、タイ、フィリピン、香港についても、「サザビーズ・インターナショナル・リアルティ®」の権利をとっております。なかでも日本の方に海外の物件を販売するエリアとしてはオアフ島が中心です。ですからワイキキのトランプタワーということになりますね。
- 栗原
- 権利は島単位なんですか?
- 大橋
- ええ。アメリカの場合はエリアごと、ハワイ州の場合は島単位ということですね。「サザビーズ・インターナショナル・リアルティ®」の場合は1地域1オーナー制をとっているんですよ。お金を払えばブランドの権利をもてるわけではなくて、審査があって1地域ごとにオーナーが決まります。日本に関しては一国で一地域になりますからリストグループが権利をもって営業をやっています。
- 栗原
- トランプタワーに話が戻りますがトランプタワーって、もう10年くらいになりますか。
- 大橋
- そうですね。販売から10年で竣工からは、まだ10年経ってないですね。2009年の竣工です。
- 栗原
- 今はどのような感じですか。 売りに出ているものはありますか?
- 大橋
- いまは、残ってる住戸もあるようですけども、ほとんどは1回売れていまして。いっときは総戸数で2割弱ぐらいリセールに出ていたんですけど、いま現状はだいたい1割ですね。
- 栗原
- 価格帯はどれくらいですか?
- 大橋
- お部屋の広さにもよるんですが、ワンルームタイプのもので40万ドル台から1ミリオンぐらいですね。
- 栗原
- 同じワンルームでそれだけ開きがあるんですか?
- 大橋
- そうですね。向きと階数によって値段に差が出ますね。ハワイの不動産というのは日本と違って価格が全てオープンになっているんです。ちょっと見てみましょうか(とPCを開いて)。いま1ベッドルームタイプが80万ドル台から2ミリオン弱ぐらい。2ベッドルームは1.8ミリオンぐらいから3.5ミリオン。で、3ベッドルームが6ミリオン超えてますね。
- 栗原
- オーナーの方の日本人比率は高いんですか?
- 大橋
- 高いです。ワイキキは、おそらく7割は日本の方であるように聞いていますね。
- 栗原
- 7割ですか? そんなに・・・。そうですか。で、いまも売りに出てるものがあるんですね。
- 大橋s
- ええ。あります、いま47戸売り物件があります。全部で462戸あるうちの47戸です。
- 栗原
- 日本人の方ではどんな方が買われているんでしょう。
- 大橋
- 企業オーナーの方、経営者の方が圧倒的に多いと思いますね。あとはお医者様の方もいらっしゃいますけれども。どちらかというとお医者様より企業オーナーです。あと投資家の方ですね。投資家、大家(おおや)業の方。
- 栗原
- 投資家の方というのは基本的に貸すということですね。
- 大橋
- 貸す、プラス、トランプタワーを購入された場合は、自身でも利用しながら、使わないときに貸すという感じですね。
- 栗原
- ハワイのコンドミニアムは割とそういうのが多いですね。ライフスタイルとして楽しみながら、行かないときは貸すという。それでもちゃんと回るんでしょうか。
- 大橋
- そうですね。トランプタワーの場合は、いわゆるホテル・コンドミニアムといわれるタイプ、ホテル運営会社・・・オペレーション会社がオーナーのユニットをホテルとして運営しているタイプがホテル・コンドミニアムといわれるんですが、その中では収益性は低い方です。
- 栗原
- ああ、そうなんですね。
- 大橋
- いわゆるネット利回りで言いますとだいたい2%前後ぐらいですね。通常、日本国内で不動産投資をされてる方ですと、だいたい5%前後というのが、ひとつの基準になっていますけども、それよりも下回っていますので収益性は低いです。ただ将来的な値上がりの可能性というのがハワイの不動産にはあります。
- 栗原
- それはトランプタワーだからというよりハワイ全体ということですね。
- 大橋
- そうですね。要因としては人口がしっかりと増えてきているのがありまして、アメリカ全体の人口も増えているんですけども、ハワイ州全体で、これは一昨年のデータになりますが、1年でだいたい1万1千人ぐらい増えているんですよ。
- 栗原
- それはどれくらいの比率になるんですか。
- 大橋
- ハワイ州の人口が142万ちょっとなので、0.8%くらいです。
- 栗原
- 先進国の中の一地域としては相当高いですね。
- 大橋
- はい。圧倒的にその中でも多いのがオアフ島になりますから。人口が増えていて、賃料も全米で4番目に高い水準なんです。一番はカリフォルニア州の街なんですけど。ですので、賃料も上がっている、不動産価格も上がっている、人口も増えている、というのがずっと続いています。将来的な見込みも、アメリカ全体が2050年には人口4億人を突破すると言われています。いま3億2千万人くらいだと思いますけれども。そういった背景を考えると不動産投資をする上ではよいかと思います。日本でもそうですけど人口が減ってるエリアに投資として持たれる方は少ないと思うんです。
- 栗原
- それはそうでしょう。
- 大橋
- そういう人口の推移を見ながらどこに資産をおくか、ということになると人口が増えてる国、先進国ですね。で、いま新興国の不動産も上がると言われていますし人口が増えると言われていますけれども、やはり制度がいきなり変わってしまったりする国もありますので。そういったリスクを考えると、やはり先進国で、しっかりとした法整備のあるところに投資をしたいということになりますので。
- 栗原
- リスクは少ないですものね。
- 大橋
- で、それプラス日本語が通じるというのもあります。
- 栗原
- それは大きいですよね。とくにワイキキのあたりはふつうに日本語が通じます。
- 大橋
- 専門家も多いですよ。日本語ができる専門家。不動産エージェントはもちろん多いですけど、会計士の方とか税理士の方、弁護士の方。あと医療関係も日本語ができる方が増えてきていますね。病院も、何かあった時、問題なく使えるというのもあります。
- 栗原
- そう考えるとリタイアした富裕層が、日本から移住してくるというのもあるのではないですか?
- 大橋
- 弊社でお手伝いしているお客様の中では移住は、かなり少なめです。せいぜいロングステイです。寒いこの時期は向こうに2ヶ月とか行って、少し暮らして戻ってきたりとか。このあいだのお客様は国内でも別荘をお持ちで、夏は軽井沢とか熱海とか…。
- 栗原
- ああ、それぞれの季節が一番いい場所に滞在するという。で、ハワイはいつ行かれるのですか?
- 大橋
- それはやはりこの時期、寒い時期に行かれたりしています。あと夏も行かれますね。夏、日本は暑いですから。軽井沢はもちろん涼しいですけども、湿気の少ないハワイで過ごすという方も多いです。
- 栗原
- そうですね。湿気を避けて。逆に1月のハワイは雨季ですしね。それでも温かいから行かれるのでしょうけれども。
- 大橋
- そうです。1月も雨は降りますけど雨が続くということはほとんど無いですから。
- 栗原
- なるほど。先ほどおっしゃった企業オーナーの方とかお医者様とかは、夏休みとお正月などに行って、あとは貸しておられるんですか?それとも放っておくとか。
- 大橋
- 放っておく方もいらっしゃいますね。貸したくないという方。
- 栗原
- ああ、あまりよその人を部屋に入れたくないという。
- 大橋
- はい。特に高価格帯の物件になればなるほど、そういう傾向が強いですね。
- 栗原
- そうなんですか。
- 大橋
- 維持管理費はそれなりにかかるんですけど、それをまかなえるだけの資本、余力がある方は、むしろ貸さずに。
- 栗原
- お掃除だけ入れて。
- 大橋
- ええ、われわれそういうお掃除のサービスもやっておりますので。空室のときの管理をして、渡航前に清掃を入れたり。あとは買い物の代行ですね。皆さん別荘を使われる時って掃除から始められるじゃないですか。で、あと買い出しに行ったりする、それが面倒だと。皆さん、お金がある方なので。お金出してでもそこをやってくれるのなら、もうそれのほうがいいと。そういうことで弊社はそこに着目しまして、渡航前ご連絡いただいて、清掃を入れて、ドリンクとかも、お客様によっていろいろ好みがありますので。そのチェックシートをもらって銘柄の指定があれば、その銘柄のものを買い揃えて冷蔵庫をいっぱいにしておく。
- 栗原
- ホテルのコンシェルジェのようですね。メイドサービスとかドライバーサービスとかもあるのですか?
- 大橋
- ええ、手配しています。たとえば空港からご自身のコンドミニアムという手配もしますし、レストラン予約、アクティビティの予約なんかも行っています。
- 栗原
- 本当ホテルのような感じですよね。 トランプタワーというのはホテルに付随しているコンドミニアムと考えていいのですか?
- 大橋
- 付随というのではなく、なかなか日本にはないタイプのものなんですけれども、ふつうのマンションがありますよね。そこにホテルを運営する会社がオーナーと契約をして使わない日にはホテルとして貸すというシステムです。中には、トランプタワーでも別荘としてお持ちなのでホテル・プログラムに入れずに、ご自身が別荘として使う方もいらっしゃって。よくハレクラニとか、あそこは全室ホテルじゃないですか。
- 栗原
- ええ、そうですよね。
- 大橋
- トランプタワーというのはそういった意味では貸されてるお部屋と、別荘として使われていて貸されていない部屋とに分かれています。
- 栗原
- なるほど、そうなんですか。
- 大橋
- なかにはそこに居住している現地の方とか、まあ日本の方で居住している方もいらっしゃると思いますけど、居住されて、そこで暮らしている方もいらっしゃいます。
(つづきます)