Blog
Blog

カーレースの醍醐味はコミュニケーションとチームワーク

佐藤元春 2021.02.07

Pocket

みなさんはカーレースについてどんな印象をお持ちでしょうか?ドライバーひとりで走る孤独なスポーツと思われがちなレースは、実は多くの仲間と共に勝利を目指す、高いレベルのチームワークが求められる団体戦です。

今回は、みなさんにスーパーカーで走るレースの魅力をお伝えします。

車好きになった理由


私が国際ライセンスまでとって、本格的にレースを始めたのは40歳前後。現在46歳なので、ちょうど6年くらい前になります。

レーサーになりたいと思うくらい車に熱中したきっかけは、スーパーカーです。小学校の頃にスーパーカーブームがありました。当時スーパーカーを模した消しゴムが流行していて、ボールペンの後ろのノック部分を使って、スーパーカー消しゴムを飛ばす遊びが流行っていました。また同時期に新幹線やスーパーカーの最高速度が載った、速い乗り物図鑑、スーパーカー図鑑があって、スーパーカー消しゴムと一緒にすっかりハマってしまいました。

また1970年代後半は、デパートの屋上にスーパーカーが展示されている時代でした。実際にデパートに展示されているスーパーカーを見て、カッコイイ、乗りたいと強く思っていました。ただ、その後19歳、20歳の頃からサーキットには行っていたんですが、レーサーになろうという気持ちはなく、ただサーキットを走ってみたいと思うくらいでした。

本気でレースに参加するようになったのは、40歳間近になってからですね。レースは時間とお金が両方必要になるスポーツです。タイヤ代だけで1レース200万円もかかる場合があるので、ビジネスの土台を作る必要がありました。資金が枯渇して辞めてしまうと、周囲からは一過性の趣味のように思われてしまいます。普段から会社で伝えている、継続力の大切さを社員に示せないし、レースをやっているライバルにも示せない。続けることが何より大事なので、その環境が整ったのが40歳だったというわけです。

レーサーを目指した理由


車は、集めて楽しむ人、街乗りが好きな人のように楽しみ方はさまざまです。そんな中で私がレースへ挑戦したのは、いくつかの理由があったからです。

大きな理由のひとつは、仲間達と感動のシェアをしたかったから。レースはドライバーだけではなく、エンジニア、メカニック、マネージャー、そして我々のスタッフを含めたチームで戦うスポーツです。仕事と一緒で、誰が欠けてもいけない。そのメンバー全員で努力して勝ち、感動をシェアできる環境を作りたかったのです。

小さな理由は本当にちっぽけな理由。フェラーリとかポルシェとか、スーパーカーに乗っている人って、街乗りではカッコつけているけれど、サーキット走ったら下手くそだと思っている人って多いと思うんです。なので私は「いや違うぞ」「どんな車に乗っても速いぞ」というのをちゃんと理解させたくて。ちゃんとサーキットで速い人がいるぞというのを示したくて、レースにチャレンジしている部分はあります。

あとは、やっぱり車が好きで、いろいろな車に乗れるからですね。レースには同じ車両を使うワンメイクレースや、GT3などのカテゴリ分けされたレースがあります。各メーカーとも、それぞれのカテゴリに適した車を出していますが、GT3のレースでは自分はメルセデスに乗ることが多いです。

メルセデスはドイツ車らしく、耐久性が高い上にバランスがいいんです。街乗りでもよく見かけますね。余談ですが、メルセデスやBMWといったドイツ車は高い・中くらい・安いといったカテゴリで分けられています。この上位のカテゴリの車に乗っている人が、下のカテゴリの人にマウントをとるのはドイツ車あるあるですね。自分から見ると、そのマウントはすごくカッコ悪い。私はあまり関わりたくないので、すべてにおいて最上級のカテゴリしか乗らないようにしています。

レースで得られるメリット



レースはチーム戦であり、個人戦でもあります。さまざまな面をもつスポーツだからこそ、多くの刺激からメリットを得られていると感じます。

大きなメリットのひとつは、コミュニケーション能力が大きく上がる点です。レーサーのヘルメットには、首の頸椎を守るハンスという器具があり、それを外さないとドリンクを飲むこともできません。ドライバーチェンジの時にヘルメットを外しますが、外す前にマネージャーから手を差し伸べられるとドライバーはイライラしちゃうんですよ。分かっているから、息も切れているのに急かすなよと。

レースはノンバーバルコミュニケーション(言語を伴わないコミュニケーション)がとても大事です。ひとつの動作でチームみんながイラッとしたり、空気がピリッとしちゃったりします。ドライバーは自分のペースでヘルメットを脱ぎたいので、脱いだ瞬間に手を出すと喜ばれるよ、と指導しています。

また細かいルールですが、予選開始30分前になったら、ピット内のトイレはドライバー以外使えません。ドライバーは長時間走る上、限られた時間にしかトイレに行けません。その時にトイレが空いていなかったら悲惨ですよね。

これらのように、チーム内は阿吽の呼吸が求められる環境なので、うちの社員も今までに6~7人連れていって、レース環境を体験させています。

もうひとつ、集中力が非常に高まるというメリットがありますね。プロスポーツ選手はプレイ中にエンドルフィン、アドレナリンという脳内物質が分泌されて、普段のビジネスシーンや日常生活ではありえないほど集中力が高まります。そうなると周りの速度が遅く見えて、ストレートを200キロとか300キロ出して走っている中でもサインボードを読めるようになるんですね。

またレース中はその高い集中力を維持しながら、360度全方位に意識を飛ばしています。モニターやミラーだけじゃなく、気配にもです。対戦相手が右からと見せかけて左から抜いてくることがあるので、自然と視野が広がるんです。

そうなると、街乗りの安全レベルが大きく上がりますね。プロのドライバーは、危険予測のレベルが非常に高い。一般的に脇見運転はダメと言われますが、脇見運転しながら360度見れちゃうんです。なので教習所では教えられないような危険予測ができるようになったので、レースをやるようになってからは、街乗りで全く事故を起こしていません。

レースを通じて得た喜び



レーサーを目指した理由にもつながりますが、レースをやっていて一番うれしい瞬間は、関わってくれる人の笑顔を作り出せた時です。優勝して最後のラップでメインストレートを走る時、みんなが手を向けて出迎えてくれる瞬間は最高です。なので練習しているときは、その瞬間をイメージするんですよ。優勝して、みんなが喜んでくれるところをイメージして走ります。

この「笑顔を引き出す」という目標は、実は迷ったときの判断基準です。ビジネスでも「お客様の笑顔を引き出せるか」という基準で考えます。レースでは、コース上をひとりで走っているかもしれません。しかし応援してくれる人やスポンサーになってくれる人、実際に一緒にレースへ参加してくれた人とも一緒に走っています。その人たちの笑顔を一気に引き出せるかが自分にとっても大きな喜びにつながるので、また続けたいって思うところですね。

ただ、こういう喜びとか魅力って、なかなか他の人に伝わりにくくて。どうしてもドライバーがひとりで走っているシーンしか目に触れないので、我々は陰でチームを支える人にクローズアップした動画を配信しようと思っています。

ドライバーが帰った後に遅くまでメンテナンスをしてくれるメカニックの姿や、ドライバーの好き嫌いを把握してドリンクを用意してくれるスタッフとか。さきほど触れたヘルメットの受け渡しの裏にあるストーリーとか。そういうところをクローズアップして、レースはチームで戦う素晴らしいスポーツであるという魅力を伝えたいと思っています。
Pocket