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スーパーカーの魅力は企業のブランディング力にあり

佐藤元春 2021.01.14

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スーパーカーはみなさん、ご存知でしょうか?高級車、かっこいい車、外車、、などいろいろなイメージがあるかと思いますが、表面的なスーパーカーの魅力ではなくて、真の魅力について理解している人は少ないのではないかと思います。 今回は、幼少期からスーパーカーに憧れ、現在はレーサーとしての傍ら、不動産の賃貸や売買をはじめ、ホテル事業、レーシングチームの運営、介護事業、輸入車販売、esports事業などを多角的に経営する私から、みなさんにスーパーカーの魅力をお伝えします。

 

■スーパーカーの魅力

 

スーパーカーの魅力として最初に挙げられるのはデザインと機能が共存しているところです。きらびやかに見えますが、実はシンプルさが追求されたのがスーパーカーです。速く走るために軽くしなければならないので、豪華な装備を外して、シンプルで、かつ、かっこよい状態というのがスーパーカーだと考えています。

どんなデザインや空間でも、立派な装飾を施すとある程度美しく見えるものです。例えば人が化粧をしたり、アプリを使ってよく見せたりすることができるのと同じです。一方、スーパーカーはスッピンとも言える状態だと私は思っています。 世の中の人は逆に思いがちですが、スーパーカー以外の他の車がむしろ盛られている状態です。派手な装飾がないにも関わらず美しく、カッコイイというのがスーパーカーです。

さらに、スーパーカーはサーキットで速く走る機能も備えており、無駄なものを排除した上で、美しく輝いて見えるところがスーパーカーの魅力ではないでしょうか。

 

■スーパーカーの乗り心地

 

  スーパーカーはサーキットじゃなくて街乗りもできる車なので、昔は乗り心地が悪いものもありました。走りを徹底的に追求すると、乗り心地を捨てなければいけない、ということはどうしても起こります。

ただ最近スーパーカーも進化しており、モード切替によって乗り心地の調整が可能です。例えば雨の日用のウェットモード、雪の日用のスノーモード、快適に乗れるコンフォートモード、そしてスポーツモード。つまみを切り替えるだけでエンジンの出力やサスペンションの固さなどの乗り心地を変えることができます。コンフォートモードにしておけば、街乗りでも一般的なセダンと変わりない乗り心地で快適に運転することができます。

個人的にはあえて街乗りでもレースモード、スポーツモードで乗り心地が悪い状態を楽しむのも醍醐味だと思っています。モードの切り替えによって出るスピードが異なりますが、街乗りであれば法定速度が定められているので、もちろんスピードは出せません。どちらかというと直に伝わってくるちょっとした路面の荒れや凹凸、小石を踏んだ感触などを楽しみます。

レースの時と違って、街乗りの際にはそこまでの路面の情報は必要ないのですが、私はやはりそのスーパーカー本来の姿で乗りたいので、ちょっとした路面の情報を体に感じながら、「あ、ここの路面はこういう風になっているのか」と思うのが楽しいのです。

サーキットではタイヤカスを踏んだ瞬間に挙動が変わったり、他のレーサーもブレーキをかけるポイントが同じなので、1周前はグリップしても次の周回だと滑ったりすることもあります。そういう微妙な違いを感じながらレースに臨む必要があり、街乗りであってもスポーツモードにしておくことで路面の情報を感じ取りやすくなります。
 

■抑えておきたいスーパーカー

 

  抑えておきたいスーパーカーを挙げるとすると、フェラーリ、マクラーレン、ロータスの3種類です。今回はその3つの車を紹介したいと思います。

・フェラーリ


フェラーリを知らない人は少ないと思いますが、フェラーリは企業ブランディングという面で考えると、おそらく世界最高峰のブランディングができている会社の一つだと思います。特別なお客様に売り手の方が強い立場で販売するというスタイルをとっているブランドはたくさんありますが、その究極系がフェラーリでしょう。

フェラーリは、そもそも”お客様は神様だ”という考えを古いと思っていて、お客様は神様ではなくてファンであると考えています。世界限定車を買うためには、欲しくもない車を買う必要があったり、二台三台同時に新車をオーダーしたりなどが必要です。そうであっても、乗り手としてはどうしてもその限定車が欲しくて、世界中でオーナーの行列ができているようなブランドがフェラーリです。そのため、車の魅力以前にそのブランディングの質が高いと言えます。

そしてそんなファンをフェラーリはさらに厳選します。買ったはいいがほとんど乗らないコレクターや、すぐ転売するような人は買うことすらできません。転売禁止条項などもあり、フェラーリを購入できるのは街乗りもするし、サーキットも走り、レースにも出るような本当にフェラーリに乗ることを愛しているファンのみです。

メーカーにとってみても、そういったファンに車を売ったほうが有益なデータが収集できますし、その集めた情報を次の車の開発に役立てることもできます。そういった意味での真のファンづくりの上にブランディングが成り立っているのがフェラーリです。 この企業としての姿勢は見習うべきだと思っています。ここまで突き詰めてブランディングができている企業は世界中を探してもないでしょう。

また、昔から景気の良し悪しに関わらずF1に参戦していることもフェラーリの魅力です。有名なF1ドライバーを排出して、そしてF1で勝つための車を作るというこだわり。そういった姿勢に共感して応援したい、乗りたい、と思っているファンも多いのではないでしょうか。

さらに、フェラーリは良い意味で不完全でもあります。なので、いまだに故障をしたりすることもあります。最新モデルなのに、エアコンのガスが出なくなったりするのがフェラーリのかわいらしいところです。フェラーリは不具合を楽しんで乗る車なので、それが楽しめない人は向いていないかも知れません。

・マクラーレン


二台目はマクラーレンです。マクラーレンという車も、フェラーリと同じように昔からずっとF1という世界最高峰のレースで戦ってきたメーカーです。レースの業界では昔からマクラーレンは有名でしたが、街乗りができるスーパーカーをマクラーレン自らが販売し始めたのはここ十年のことです。

マクラーレンの素晴らしいところは徹底的に機能を追求するところです。追求された機能というのは、どのメーカーよりも軽く、どの車よりも重心を低く、そしてどのメーカーよりも速く、というものです。そして、機能にこだわり抜いた結果、現在のデザインに行き着きました。

他のメーカーはどちらかというと、デザインがあってそちらに機能を寄せていくのですが、マクラーレンは速く走るために追求した結果いまの形になりました。デザインとは機能の結果である、ということを、身をもって証明してくれています。

ここに惹かれている人は多いのではないでしょうか。勝つために、速く走るために、そこにフォーカスしてモノづくりをしている凄くすばらしいメーカーです。

また、マクラーレンは機能を追求しているので、不具合なども起きにくい車です。なので初めてスーパーカーに触れる人は、マクラーレンが乗りやすいでしょう。

さらにマクラーレンは新車発表会や特殊な車両の発表会のプレゼンの仕方が優れています。急に「一週間後、倉庫へ来て頂けますか」と案内があり、倉庫へ行ったら大きなトラックへのリフトに導かれ、上に上がった瞬間に、実はそこで新車発表会がある、など新車発表のショーとして顧客の心を掴むのが上手です。

・ロータス


フェラーリはイタリアの車ですが、マクラーレンとロータスはイギリスの車です。ロータスが他のスーパーカーと圧倒的に違うのは価格です。800万円からだいたい2,000万円ぐらいで買うことができます。 また、ロータスの特徴はそのボディの軽さにもあります。スーパーカーは軽ければ軽いほど速く走り、ダメージも少なくなります。ロータスは昔から無駄にボディーを大きくしたり、パワーを上げたり、エンジンを大きくしたりせずに、”軽くてサーキットで走るととても速い車作り”をずっと貫いてきました。

車内のインテリアはいたってシンプルで、走り以外の装備はほとんど何もないので、普通の人が乗ると苦痛で仕方ないかもしれません。それでもずっと売れ続けているのは、軽さを追求してサーキットで速い車を作り込んできたからでしょう。ロータスならフェラーリやマクラーレンの3分の1ぐらいの金額で、同じぐらいのタイムで走ることができます。

ロータス3台でフェラーリ1台と同じぐらいの金額なので、メンテナンスやチューニングにお金をかけることができます。自分の好みの車として足回りのサスペンションを替えたり、ラジエーターやインタークーラーという冷却装置を替えたりなどそちらにもお金を回すことができます。

フェラーリ、マクラーレンはどちらかというと購入したまま乗る、しかしロータスは、納車されてから自分色に染めていく、自分の好きな車にチューニングしていく、という魅力がある車です。

サーキットで走るためには非常にコストパフォーマンスの良い車ではありますが、街乗りにはそんなに向いてはいません。もちろん街乗りしている人もいますが、そういう方はよほどロータスが好きな方でしょう。

サーキット走行に特化した車なので、荷物もほとんど詰めません。ビジネス用のバック一個ぐらいしか置けないのではないのでしょうか。誰かを乗せる、というよりは一人でドライブを楽しむのに適した車です。

また、ロータスもフェラーリと同様に不具合が出やすい車でもあります。いきなりドアが開かなくなったり、グローブボックスが落ちたりすることもフェラーリと同じように楽しめないといけません。

 

■今後のスーパーカー業界

 

  いま、サステナビリティなどが注目されていますが、車においても全てが一気にEV化、電気自動車化するとは思えません。電気自動車化すると、CO2の削減は達成できるかも知れませんが、充電設備の設備投資だとかは全然追いついていないように思います。

全国民が電気自動車に乗るということを想定すると、充電設備が全然足りなくて、移動手段としての車本来の目的が達成できないのではないでしょうか。

電気自動車は発達していくと思いますが、”ガソリン車は良くない”という意識は、もう一度見直される時が来ると思います。電気自動車は発達しつつも、ガソリン自動車とか、もしくは別の形のハイブリッド車が出てくるのではないでしょうか。ハイブリッドは電気プラスガソリンなのか、電気プラス水素なのか、それはわかりませんが各メーカーはそういった領域において考えを張り巡らせているのではないかと思います。

ただレースの業界では、電気自動車だけのレースというのは増えてくるのではないでしょうか。そうすると普通のレーシングカーに比べ音が静かなので、海外でやっているような公道レースの実現可能性も高まります。

これまで公道レースがなかなか実現できなかったは、危険性の問題のほかに、音の問題がありました。レーシングカーが家の前を通ると不快に思う人ももちろんいます。電気自動車ならその音の問題を解決できますので、レース業界においても電気自動車によるレースはこれからより取り組まれるようになるのではないかと考えています。電気自動車の発展にともなって、スーパーカー業界やレース業界がさらに盛り上がれば良いですね。
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