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イフタールの夕べ

Mimi 2026.03.19

トルコ料理教室の先生、セムラさんが、ご自宅のイフタールにご招待してくださった。私は、トルコの文様や絵が好きだし、エブルというマーブリング技法の講座にも通った。

だが、イスラム教には疎い。イフタールと言ってもピンと来ず、何かの記念日のランチ会のようなものだろうと思っていた。日本の雛祭り会のような。

前回、セムラさんのお宅でのランチ会が素晴らしかったので、食いしん坊の私としては、是非参加したかったのだ。










前回のランチ会の写真から


3月15日と言われていたのに、当日朝十時になっても時間の連絡が来ない。ランチ会ならそろそろ出発の時間だ。ランチ会じゃないの?あわててイフタールとググってみた。

イスラム教徒は、宗教上の戒律により、約1か月続く断食月(ラマダン)の間、日の出前の礼拝時から日没まで一切の飲食を絶つ。日没後初の食事はアラビア語で「イフタール」(「断食を破る」との意)と呼ばれ・・・。

食事会は日没後なのか。そこで3月15日の日没を調べると、17:49となっている。はて、何時に伺ったらよいのかしら。タクシーで行く私としては、正確な時間に行くのは困難だし、早めに行ったらよいのか、遅く行った方が良いのかの見当もつかない。


セムラさんからのLINE


トルコ人なら、常識的な時間があるに違いないが・・・。そこで、セムラさんに問い合わせたら、5時半開始とのこと。アザーンの時間に始めるという。アザーンって、モスクから拡声器で流れる歌のようなもの?そんな放送あるのかな。とにかく5時半に到着。








イフタールの飾り付けのされた部屋


お宅には、イフタールの飾り付けがされている。青を基調とした飾りが、清浄な雰囲気を醸し出す。雑多な物皆無。一体どうやったら、こんなに完璧なまでに美しい空間を作れるの?

料理教室で通訳のムゲさん一家、(ご夫婦と小6の娘、小4の息子)がもういらしていて、セムラさんの旦那様と小3の息子、小1の娘さんと談笑し賑やかだ。

日没時間を過ぎると、お父さんたちと子供達は別室で食事。日本人の招待客、ユミコさんと私は、セムラさん、ムゲさん、ムゲさんのお嬢さんのメリエムさんと一緒にテーブルを囲む。

セムラさんは、5人ずつ分かれた両方の部屋に食事を供しなければならないのに、慣れた手つきだ。日の出から何も食べていないのに元気。料理を作る時の味見もしないそうだ。


イフタールの時しか焼かないパン(上)



断食からの体を慣らすために、まずナッツから食べる


イフタールの時しか焼かないパンは一年中食べたいほど香ばしい。結婚式などで出されるというケシケキという料理は、あまりにも絶妙なねっとりした舌触りで、一体何が入っているのか見当がつかない。麦とチキンの裂いたものを、15分ほどマッシャーで餅つきのようにつくので翌日は筋肉痛とか。断食しながらも力仕事を頑張ってくださったのだ。

手間がかかったサラダも数種類。一つは、にんじんとズッキーニを擦りおろして、炒めて、ヨーグルトとニンニクで味付けして、ドライトマトと、炒めたクルミをトッピング。(彼女はそれを簡単なサラダと言う。どこが?)きれいな色のハイビスカスのジュースも手作り。


ケシケキ-花の右横
ニンジンとズッキーニのサラダ-ケシケキの奥



ハイビスカスのジュース



メインのチキン



デザート


メインはチキン。くるりと巻いて焼いてあり、ナイフを入れると中から宝石のように野菜が。
付け合せは、炊き込みご飯。デザートはシロップのかかったケーキ。甘くておいしい。

本当は、全部一皿ずつ写真を撮るべきだった。だが、見た途端からおいしそうで、つい写真を撮らずに食べてしまった。私は断食していたわけではないのに食欲に負けた。

さて、エキゾチックな美少女、メリエムさん〈12歳〉が女性のテーブルに着いたのは、ラマダンに参加できる大人の体になったから。朝3時に起きて日の出までに朝ごはんを食べる。それからラマダンの期間ひと月ほどは、日没まで食事できない。だが、小学校の給食がある時は食べると言っていた。豚肉だけでなく、鳥や牛も、特別なやり方で殺された肉しか食べてはいけないのだそうだ。小学校の給食で食べられない物があれば、代わるものを持って行く。例えば、スープがだめな時には、スープを持って行く。セムラさんも、子供達のお弁当を毎日作っている。トルコ人のお母さんは大変だ。

イスラム教が始まったのは610年だそうだ。世界のメジャーな宗教の中でもっとも新しい。それまでは、規制された食材やラマダンは存在しなかったに違いない。だが、戒律を受け入れて、日本に住んでいても母国の宗教や文化を大切にするイスラム教の信者たち。


オヤの縁取りがされたタオル


それは、料理だけではない。トルコの女性たちは、オヤというレース編みの縁飾りをする。セムラさんは、結婚する時に自分で作ったという、タオルの縁飾りを見せてくれた。繊細な細かな編み目。そのタオルを今も日常に使っている。それを見て、セムラさんが、面倒な料理を厭わず作り続けている原点を見る気がした。根底にあるのは繊細で優しい思いやりだ。

心地よく和やかに過ぎて行ったイフタールの夕べ。トルコの人の奥深さに触れ、感謝。