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マンハッタン島のユニコーン

NOVA ERA 2022.11.10

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11月になると思い出すことがある。

以前、秋にマンハッタンに滞在した時、マンハッタン島の北が白樺、赤や黄色に紅葉した樹木で綺麗であると、ニューヨーカーが教えてくれた。
そこで、ある晴れた平日の午前中に行くことにした。
行ってみると紅葉した樹木とひんやりした気温と静けさで、聞いたとおりの景色と雰囲気だった。
ふと見ると、美術館があることに気づき、行ってみることにした。
事前に調べていったわけではなく、偶然に見つけた美術館だった。



館内には人はまばらで、美術館の周囲よりさらに静かだった。静謐な感じがした。
中世ヨーロッパの建築のようで、回廊がとても素晴らしかった。
ユニコーンのタペストリーがあり、何かを私に伝えたいという感じがした。
タペストリーのユニコーンが私をここに呼んだのかもしれない。
タペストリーのユニコーンが何を言いたいのかが、ぼんやりと伝わってきた。

「ニューヨークにこのままいてはいけない。ユニコーンの私のようになる。」

それは、自分が思っていることをタペストリーのユニコーンに投影しているのかもしれない。

美術館のカフェで佇んでいると、異国に1人で来た不安感と自由な感じが混ざり合い、スーッとどこかへ流れて行った。

帰宅してから、美術館の名前と概要を調べた。クロイスターズ美術館という名前で中世の修道院の回廊が移築されている、とあった。

夜に、深煎りの珈琲を飲みながら、

タペストリーのユニコーンは、

「この地を立ち去れ。」

と言わなかった。

私はまたこの地に帰ってくるだろう。
そして、その時はもう日本に戻らない。

そう感じた。

クロイスターズ美術館は、今は、ニューヨークの有名な観光地の一つである。あのような静かな体験はできない。
貴重な体験をした。
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