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株主優待制度

Shirotaromaru 2022.02.17

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金融危機や国際紛争、更には新型コロナウイルス。金融市場を揺るがす要因は尽きることがなく、変動幅も大きくなっている。今回は株式投資を行う上で、株価が多少変動したとしてもその株式を保有することに意義を見出せる「株主優待」制度についての魅力や注意点についてとり上げてみたいと思う。

■株主優待制度とは



株主優待とは、その名の表す通り一定数以上の株式を保有する株主に対し、株式会社が自社製品やサービスなどを提供する仕組みのことだ。現在、国内の株式市場に上場する約3,700社のうち約1,500社が優待制度を導入している。

■どんな優待がある?

個人投資家に人気の企業とその優待品を少しだけご紹介しよう。



一般に飲食品などの自社製品や、サービス利用時の割引券などを提供する企業の人気が多い。また食料品や飲料は女性によく好まれ、サービス割引がある優待は男性に人気が高いとも言われている。

■優待制度はなぜ生まれたか

株主優待制度を採用する理由は、おおまかに以下の3点と考えられる。

1. 個人株主の増加が期待できる
現在の東証一部での上場を維持するための条件に、株主数が2,000人以上であるという項目がある(※2022年4月の東証再編により変更あり)。また株主数が多ければ多いほど敵対的買収を仕掛けられた際のリスクを軽減できると考えられるため、株主数の増加は重要な課題だ。優待を目的に投資をする個人投資家も少なくないため、魅力ある優待を提供する企業が増加した。

2. 安定的な株価が期待できる
優待を楽しみながら株式を保有する株主は、大幅な業績の悪化などがなければ株式を売却する可能性が低いと考えられる。キャピタルゲイン(売買収益)を第一目的にしている投資家と比較して長期的な株主になる可能性が高く、株価の安定にもつながる手段として優待を取り入れる企業が多い。

3. 自社商品の広告として活用できる
優待として自社グループの商品詰め合わせや、施設の割引券などを提供することで実際に商品を使用してもらう機会を生み出すことができる。商品を気に入った株主はリピーターとなる可能性が高く、売上を増加させたり商品や企業の知名度をアップさせたりという効果も期待できる。

■優待を受けるためには権利確定日と株数に注意

株主優待を受けるためには、当然その企業の株式を購入する必要があるのだが、購入するタイミングや株数などに注意が必要だ。優待や配当金を割り当てられるには、決められた権利確定日(決算日と同一日のケースが多い)にその株式を保有していることが求められる。権利確定日は企業によって異なるため、企業のホームページや株価情報サイト、会社四季報などで確認することが必要だ。

また、保有株数によって優待の有無や種類が異なることが多いため、狙った優待を受け取れる必要株数も予め確認しておこう。証券会社によっては優待の一覧や詳細をまとめた冊子を作成している場合もあるので、口座を保有する証券会社に問い合わせてみてもいいだろう。

■海外ではあまり行われていない株主優待

日本では良く知られている株主優待だが、実は他国では一般的ではない。米国の豪華客船の運航会社として知られるロイヤル・カリビアンやカーニバル・コーポレーションなどで乗船料金の割引や船内で使用できるマネーの提供があったり、インターコンチネンタルホテルズの株主に対し宿泊費の割引などがあったりするが、これはごくまれな例だ。

海外では株主優待を提供する企業は激減し、配当金の支払いにより利益還元を行うケースが一般的となっている。優待制度を廃止した理由としてはコストの問題や、インターネットの普及により短期売買を繰り返し、キャピタルゲインを重視する個人株主投資家の増加などが挙げられている。

■株主優待だけを重視してはいけない



海外企業のように、日本も今後優待の制度に変化がみられる可能性がある。 株主優待は不変ではない。業績が悪化すれば当然廃止や減額の可能性があり、事実新型コロナウイルスで業績が悪化し長年継続していた優待を廃止した企業が出てきた。 大和証券グループの大和インベスター・リレーションズ(IR)の発表したレポートでは2019年9月時点では1,521社が株主優待を実施していたが、20年9月には1,512社、21年9月には1,476社と少しずつ減少する傾向にある。株主優待だけを重視して銘柄選定を行うと、このような変更がなされた際に保有の見直しが必要となる。

また、2022年4月に行われる東京証券取引所の市場区分見直しも優待制度に大きな影響を与える可能性がある。上場を維持するための株主数の基準が引き下げられるため、優待により個人株主を増やす必要性が薄れると考えられているからだ。

■新たな優待制度の模索

優待制度を縮小する動きの中、長期や大口の株主にはよりよい優待を提供しようとする動きも見受けられる。投資をしている企業からの優待や配当はやはり嬉しいものだ。自分だけで使うだけでなく、家族や友人にお裾分けしても喜ばれるし、気に入った商品に出会えればますますその企業を応援しようという気持ちにもなるだろう。

今後、優待銘柄への投資には財務状態や業績の見通しだけではなく、継続して優待を提供する意向があるかどうかについても注視して銘柄選定を行うことが求められるだろう。業績に見合っていない優待を提供している企業は大きな成長も見込めない。配当も合わせ、株主への還元をどのようなスタンスで行うのかをしっかり確認することが重要だ。


※本記事は、情報提供を目的としたものであり投資その他の行動を勧誘する目的で記載しているものではありません。銘柄選択など実際の投資にあたっての投資判断は、ご自身の判断で行ってくださいますようお願い申し上げます。
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