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世界の富裕層にも人気「ウォーキングセラピー」で期待できる効果

焔(Homura) 2022.02.03

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今欧米でも人気の心理療法ウォーキングセラピー。アメリカの富裕層も多くがこの心理療法に積極的に取り組んでいるようです。このセラピーの第一人者とも言えるのがイギリスの臨床心理士のジョナサン・ホーバンです。彼が上梓した著書「Walk With Your Wolf」を数年前に私も読みましたが、この本ではタイトルにある通り「狼」が大切なキーワードとして使われています。

そんなジョナサン・ホーバンが推奨するのは「とにかく自然の中を歩くこと」です。これだけで多くのストレスから解放されるといいます。切り口もとってもユニークなセラピーですが、そもそもなぜ狼なのか?心理カウンセラーである私にとってもとても興味深い一冊でしたので簡単に紹介したいと思います。

■Walk With Your Wolfの狼が意味するものと三つの効果

この本の原題ですが「自分自身の狼」(内なる狼と訳されています)とありますが、そもそもなぜ狼というキーワードを選んだのでしょうか?

その答えはこの本の中にありました。狼は人間の持つ二面性を表すための最適な比喩だとジョナサン・ホーバンは著書の中で説明しています。人間の持つ野生や危険性などを体現している動物。そして狼という動物は群れで行動します。そこで求められるものはお互いのコミュニケーションです。団体行動に忠実で非常に社会的な動物でもあります。

また人間と同じで、団体行動の中でも自分自身の空間は必要となります。狼にも自由に歩き回れるスペースはとても大切で、それは人間社会にも当てはまることでしょう。また檻に閉じ込められた状態(自由に動くスペースがない状態)ではたとえ狼といえどもストレスまみれになり、ありえないほど警戒心を強めるようになります。

ここまで説明すればなぜ狼をメタファーとして使ったのか理解できますね。狼もハンティングする時はいきなり獲物に突進するようなことはしません。最善のタイミングを図る事はとても大切です。ウォーキングセラピーで進めているのは、最善のタイミングを図るための小さなステップを積み重ねるためのルーティン作りです。ストレスまみれの状況ではいきなり大きな改善を求めることはできません。

ジョナサン・ホーバンはプロセスの中で注意すべきことは「自分自身の三つの側面」だと述べています。心理面や身体面、そしてスピリチュアルな面が私たちが向き合わなければならない三つの側面となります。これらの要素はメンタルヘルスを維持するために不可欠となるもので、お互いに影響しながら健康状態を高めてくれるとしています。ウォーキングセラピーで得られる効果について次のように述べています。

【心理面で期待できる効果】

ウォーキングをしている時の脳は常に活性化されます。例えば狼の場合、歩いている状態というのは常に神経を張り巡らしていると認識されます。逆に座ったりじっとしてる状態は認知機能の働きが低くなってしまいます。

また、ウォーキングにはアドレナリンの分泌を促す効果もありますので、明るい気分になれたり満たされた感覚を得ることが可能になります。従ってウォーキングには心を解きほぐす高い効果が期待できます。実際の心理カウンセリングでも室内での対面セラピーからウォーキングに切り替えた結果、クライアントの症状が改善されたと言います。

【計り知れない身体面の効果】

これは説明するまでもなく、広い屋外でのウォーキングは大きな健康効果をもたらします。また広々としたスペースでのウォーキングはストレス軽減にも大きな効果があります。もちろんそこで求められるものは継続的なセラピーです。セルフのメンタルケアではなかなか難しい継続ですが広い自然の中を大きくするだけであれば、簡単にルーティン化することもできるでしょう。

【スピリチュアルな効果とは「つながり」】

私自身心理カウンセラーとして「スピリチュアル」というワードを使うのには若干の抵抗があります。ジョナサン・ホーバンはこれを「つながり」という表現に置き換えています。人間の体は物質で成り立っているわけですが、誰にでも「つながりたい」、自然と一体化したいと言う欲求は根源的にあると言います。

広大な自然の中でのウォーキングは確かに自然との強い結びつきを感じさせてくれることでしょう。ジョナサン・ホーバンが唱えるのは少しでもこのような感覚を感じることができれば、メンタル的なストレスも減らすことができ、幸福感を感じることができるようになるということです。

この本を読んでみて感じたことは、「狼」という的外れなワードを使いつつも人間の心理面をとてもわかりやすくアウトプットしている、ということでした。歩くことで健康的な体を得るということではなく、自分自身でできる「セルフ」メンタルケアを軸とした展開は非常にわかりやすく、最後まで読んでみて「なぜ狼というメタファーが必要だったのか」を十分に理解できました。
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