新型コロナウイルスとスポーツ界
Shirotaromaru 2022.01.24
2020年に開催予定だった東京オリンピックが、新型コロナウイルスのパンデミックにより1年延期され、様々な制約の元で開催されたことは記憶に新しい。新型コロナウイルスは人が集まるイベントの開催を阻み、アスリートたちを今も苦境に陥れている。新型コロナウイルスがこれまでスポーツ界に与えた影響と、各スポーツ団体がどのような対策を行ってきたかなどについて取り上げてみたい。
■史上初の延期・無観客で行われた東京オリンピック
新型コロナの世界的な流行が始まり、社会生活に大きな影響を及ぼすようになってからスポーツイベントの運営可否についても様々な議論がなされるようになった。 中でも最も注目を集めたのは、同年7月から開催予定だった東京オリンピックについてだろう。オリンピックは過去に5回開催中止になったことがあるが、それらは全て戦争が理由となるものだ。前例がない延期はIOC(国際オリンピック委員会)、WHO(世界保健機関)などと幾度も協議を重ねて決定された。しかしながらパンデミックが収束する兆しはなく、緊急事態宣言下の東京オリンピックは史上初の無観客開催となった。
延期、更に無観客での開催は、アスリートたちにとって練習の困難化や出場選手の交代、メンタル面の問題など多くの悪影響を及ぼしたことが認められている。また、海外観客の受け入れ停止によるインバウンド消費の減少、チケット販売停止や飲食・宿泊費などの消費機会の喪失など、有観客開催だった場合よりも約1.4兆円の経済損失があったと見なされている。
■高校野球とプロ野球
2020年の第92回選抜高等学校野球大会(春のセンバツ)、そして第102回全国高等学校野球選手権大会(夏の甲子園)は共に開催を中止した。報道で、高校球児たちが高野連からの中止の通達を聞き、涙を流す姿を目にした人も少なくないだろう。翌2021年は、台風や長雨による延期があったが様々な感染対策を施して開催可能となった。開催に際し入場者を学校関係者のみに限定し、選手に大会前と期間中のPCR検査を義務付けるだけでなく、大きな声で校歌を斉唱することや球場の土の持ち帰りを控えるなど徹底した感染対策を行った。しかしながら感染者の拡大により地区予選が中断されたり、選手や学校関係者の感染で試合を辞退したりするケースもあり、完全な形とは言い難いものとなった。
プロ野球についても同じような状況だった。2020年はシーズン開幕が3カ月延期され、試合数の減少や無観客試合の開催などで各チームは経営的に大きなダメージを受けた。「密」を避け、「接触」を減らすため選手たちはナイスプレー時のセレブレーションが禁じられた。録音された声援などの音声が流されたものの、TV中継された試合はやはり寂しいものだった。
翌2021年には観客の動員数や報道陣の数は制限した上で有観客試合が復活した。外国人選手たちは入国制限によりチームへの合流が大幅に遅れるという事態が頻発し、感染防止策の営業時間短縮要請に対応するために延長戦をなくし9回で打ち切りとする特別ルールが適用された。このルールは引き分けを増加させ優勝や順位争いに大きな影響を及ぼしたため、来期以降は改善が必要だと言われている。
■経営が追い込まれたサッカーJリーグ
2020年はプロ野球と同じように、試合日程の中断・延期などが相次いだ。通常の感染対策以外にも、感染リスク抑止のため対戦相手が近隣チームに絞られたり、J1-J3の各カテゴリ間での昇降格ルールが変更されたりと、通常とは大幅に異なるリーグ開催となった。J1優勝の賞金額が当初の3億円から1億5,000万円に変更になるなど、各種表彰における賞金額も従来の規定の50%となった。無観客試合や入場者数制限の影響でチケットやグッズ、スポンサー収入が激減し、債務超過や赤字に転落するチームが相次いだ。Jリーグには債務超過または3期連続で赤字になった場合、クラブライセンス制度が交付されないというルールがあるが、新型コロナウイルスの影響を考慮し、2021年度末まではこのルールを適用しない特例が実施された。債務超過については2024年までの猶予期間が設けられ、各クラブはそれまでに経営の立て直しが必須とされている。
苦しい状況が続く中、北海道コンサドーレ札幌では選手側から給料返還を申し出るという異例の事態も起きている。クラブを支援することを全選手合意の上で決定したと言われているが、Jリーグの経営の厳しさがよく分かる一件だ。 オンラインでのファンイベントを企画したり、クラウドファンディングでの支援を募ったりと、新たな試みで収益を獲得しようと趣向を凝らすチームも増えてきている。