Blog
Blog

世界中の富裕層の投資対象の絵画!AI鑑定で偽物判定されたルーベンス作品

焔(Homura) 2022.01.07

Pocket



世界中のセレブや富裕層が投資として購入するのが絵画でしょう。私の友人も多くの方がオークションで有名な絵画を落札したりしています。そんな時に知ったとあるニュース。英国の国立美術館(ナショナル・ギャラリー)にあるルーベンス作とされる「サムソンとデリラ」がAIによって91.78%の確率で本物ではないと判定されました。

もともとこの作品は40年以上前から一部専門家の間で偽物である可能性について語られて来たものです。そして、今回AIによる鑑定で本物ではないとなったわけですが…その背景には複雑な状況も垣間見ることができます。AIが今後の絵画鑑定のメインとなるのでしょうか?

■10億円の価値があるバロック時代画家ピーテル・パウル・ルーベンス作「サムソンとデリラ」

実はこの作品ですが、私自身ナショナルギャラリーで実物を拝見したことがあります。もちろん絵画判定には素人の私、英国の国立美術館に展示してある絵画が本物かどうかなど判別はつきません。

この作品は1609年に制作されたものです。1980年にナショナルギャラリーが約10億円で入札しています。ただ、その当時から一部専門家の間では偽物ではないかと言う可能性について指摘がありました。そして、今回AI鑑定によって「本物ではない」となったわけですが、この分析システムがどのような仕組みになっているのか私自身興味があるので調べてみました。

■絵画の鑑定方法とAI分析システム

一般的な絵画の鑑定方法は以下の通りです。
1. 専門家によりその画家特有の画法と筆致の判別
2. 絵画が誰の手に渡りどのように伝わったかなど履歴を調べる

このような流れの鑑定がこれまでは一般的でした。それでもわからない場合に科学的手法を使用することになるわけですが、例えば顕微鏡で絵画の細かな状態を見たり、蛍光のX線分析などで画材やキャンバスの組成が時代に合致しているかを調べます。そして今回のAI鑑定ですが、第4の鑑定方法として注目をされています。

さて今回の作品に対する鑑定方法ですが、色々な疑問点も挙げられているようですね。例えば、
・ 2,000作もあるルーベンスのうち148作品との比較だけで十分なのか?
・ 彼の弟子が仕上げの筆致を行ったとしても作品の構想から本人が関わっていればルーベンスの作品と呼んでもいいのではないか?
などなどです。

このような点がアートの難しさなのかもしれませんし、面白さだとも言えるかもしれません。

さて、このルーベンスの真贋ですが、そもそも筆致鑑定も複数人のものが入り混じっていれば、例えAIの力を持ったとしても100%の判定はできなくなります。今回のAI鑑定に関わったのはスイスのArt Recognitionという企業です。この企業はAIによる絵画の分析システムを開発していますが、これまで既に400以上の作品を分析しています。

今、物議を醸している「サムソンとデリラ」と同じタイミングで、ナショナルギャラリー所蔵で真贋の論争余地が全くない「早朝のステーン城の風景」もAIで分析しています。その結果は「98.76%」の確率で本物と判定されているようです。

■「サムソンとデリラ」に対する公式コメントは今後でないかもしれません

さて、このように注目を浴びるAI鑑定ですが、その後英国のナショナルギャラリーから公式なコメントは一切発表されていません。「現在はコメントできない」という発言はありましたが…ただ、この発言に関しては英国の新聞などを調べたり、ヨーロッパの友人に尋ねたりしましたが、ナショナルギャラリーは偽物だと認めたくなくてノーコメントを貫いているわけではないようです。

そもそもこのルーベンスという画家ですが、生涯で2,000以上の作品を残しています。工房を持って弟子を使いながら共同制作を行なっていました。従って、本物の作品であってもルーベンスが一人で描いた作品は極端に少なくなっています。また、絵画の価値は本人の手がどれだけ入っているのかで大きく変わって来るものです。さらに今回の作品でややこしいのは、下書きが二つ存在すると言う部分。

もしかすると今回AI鑑定を受けた作品ですが、実際には10億円の価値はない、そんな可能性も出てきますね。
Pocket