パリの密やかなクリスマス
NOVA ERA 2021.11.29
その人とどこで出会ったのか覚えていない。覚えているのは、パリ在住の画家で長くパリに住んでいるということだけである。どうして前後の時間が曖昧なのかも分からない。きっと彼女自身が夢の世界に住んでいるからかもしれない。
覚えているのは、彼女が借りている古いアパルトマンの暖炉の前でロールドブッシュのクリスマスケーキをいただいているところと、私が暖炉に薪をくべているところだけである。その晩、彼女の部屋に泊まったのか泊まらなかったのかも覚えていないのに、彼女の予言ははっきり覚えている。
それは、「薪をくべるのが、とてもお上手ね。思いがけないことに才能があるものよ。」 そうかなとその時は思うだけだったが、まさか、私に占術に才能があり占い師に…? 私の占いはだいたいが右脳を使うので自分的にはアートである。なので、画家である彼女との付き合いもまた、アートだったのかもしれない。
暖炉でできるゴヤの絵のような光と影。暖炉のやわらかな光と影に照らされる彼女は最高に素敵だった。 赤ワインで気持が少し解放された万年少女は、ここで何かあっても…とさえ思うほど、素敵な雰囲気だったが、私の魅力不足か何も起こらず、クリスマスツリーのサンタがただ笑っているだけなのだった。
翌日、朝10時頃に起きた私は、昨日のことが夢なのか現実なのか、分からなかった。