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メキシコの有名画家フリーダ・カーロの自画像40億円での落札に思うこと

焔(Homura) 2021.11.29

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https://www.tripadvisor.com/Attraction_Review-g150800-d152582-Reviews-Museo_Frida_Kahlo-Mexico_City_Central_Mexico_and_Gulf_Coast.html

2021年も残すところわずかになってきましたが、今年もアメリカやメキシコの友人に会いに行くのは難しそうです。メキシコといえば世界的にも有名なアーティストが多い国ですが、つい先日フリーダ・カーロが最後に描いた自画像がサザビーズのオークションで3490万ドルで落札された事が話題になっています。

これは中南米の芸術家の中で過去最高値での落札となりました。フリーダ・カーロといえば2002年に公開された彼女の伝記映画「フリーダ」で知られているかも知れません。私自身彼女の作品は好きで、2018年にロンドンのV&Aミュージアムで見たフリーダ・カーロ展は今でも記憶に残っています。

■フリーダ・カーロ「ディエゴと私」背景にあるもの

今回落札された作品「ディエゴと私」は彼女が亡くなった5年前の1949年の作品です。またこれは彼女が描いた最後の自画像となります。彼女の作品の特徴といえばキャリアを通して胸から上の画像だけを描き続けたことでしょう。それらは彼女の作品の中でも特に有名なものになっています。このようなスタイルの自画像が最初に人気になったのはルネッサンス期にも遡ります。今回の落札額40億円は過去の彼女の作品の中での最高落札額800万ドルを大きく上回るものになりました。

実はこの作品が描かれた1949年に、彼女が愛していた夫のディエゴ(同じく画家でカーロとは1939年に一度離婚しましたが翌年再婚しています)はメキシコ映画全盛期を代表する女優との浮気に走りました。この力強い自画像は彼女自身の悲しみは苦痛を絵画で明確に表現したものだと評価されています。

この作品で描かれているカーロはメキシコ南部の伝統的な衣装を身にまとっています。テワンテペク地峡に暮らしている女性たちのものです。この衣装は「ウイピル」と呼ばれますが、彼女自身他の代表的な自画像の多くで着用しているのを私もよく記憶しています。ハンガリー系米国人のカメラマンが撮影した有名な肖像写真がありますが、そこでもこのブラウスのような衣装を見ることができます。

この肖像画を実物で見れば誰もが引き込まれるような感覚になると思います。額の中央にはディエゴの頭の部分と形が浮かび上がるように描かれていますが、これは彼女の心の中心に夫が存在していることの象徴だと言われています。

18歳で大きな交通事故に会ったことがアーティストとしての彼女の作品に大きな影響を与えることになりました。この事故で彼女は3ヶ月以上入院しますが、病院での退屈な生活や受けた傷の痛みを紛らわせるために本格的に絵を描くようになりました。 個人的に特に印象的だったのはジェシー・バートンという作家が書いた彼女に関する本でした。私自身彼女がどのような人生を歩んできたのか知った時には、大きな衝撃を受けたものでした。

■生涯で30回以上の大きな手術を受けたカーロの作品の背景

彼女が描く作品はほとんどがサイズ的には小さなものです。そこで取り上げられるテーマは自叙的なものばかりですが全てが激しさを感じられるものです。絵の具の代わりにマニキュアを使って作品を作ったりもしていました。

作家ジェシー・バートンがカーロを表現するのに非常にユニークな言葉を使ってるのがとても印象的でした。「傷つきやすさと鈍感さを持ち合わせたアーティストであり、自分で自分自身を創り上げ、演じ続けるしかなかった」ところもあったようです。また彼女のイメージや写真がいたるところに現れて定着したために、彼女自身の人間性ではなくそのイメージだけが拡散されてしまったと語っています。

そんな彼女の自画像では彼女自身の私生活と共産主義者としての政治志向、敬虔なカトリックとしての育ち、メキシコの原住民文化に対する忠実さなどが統合されて表現されています。彼女は18歳の事故以来、生涯で30回以上の大きな手術を受けています。そして1954年に47歳の若さで肺炎を併発して亡くなることになりましたが、その5ヶ月前の2月に彼女が綴ってた日記では足を切断された苦しみと耐えがたい苦痛を訴えています。

メキシコシティのすぐ近くにあるコヨアカンに彼女の生家があります。「青い家」と呼ばれる全面が青色でペイントされた家ですが、現在はフリーダ・カーロ記念館として一般公開されています。私も何度か訪れた記念館ですが、もしメキシコ旅行に行かれるのであれば是非一度訪問して欲しい場所です。
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