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2021年度税制改正のポイント

Shirotaromaru 2021.08.20

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2021年度の税制改正は、新型コロナウイルスにダメージを与えられた家計や企業に対しての減税措置の拡充や減税対象期限の延長などが中心となっている。
今後の動向をしっかりと注視していきたいのは、高所得者への課税強化の流れだ。

米国では、富裕層の株式売却時にかかるキャピタルゲイン税の税率を現行のほぼ2倍にあたる39.6%に引き上げる案が発表され、市場に大きなインパクトを与えた。
日本でもこの6月に西村経済財政・再生相から、コロナ禍でますます深刻となった所得や資産格差への解決策の一つとして、高所得者への金融課税の強化を今後の検討課題として取り上げる旨が発表されている。
我が国の財源は新型コロナ対策に加え、史上最高額と言われる東京五輪の開催費用などでたいへん厳しくなっており、今後も課税強化の流れが留まるとは考えられにくい。

まずは今年度の改正で、富裕層に影響があると思われるものをいくつか取り上げてみたい。


出典:pixabay https://cdn.pixabay.com/photo/2019/04/02/09/27/income-tax-4097292_1280.jpg

住宅ローン減税の特例措置

これまでの住宅ローン減税は、控除を受ける年の合計所得金額が3000万円以下であれば、 住宅ローンを借りて新築・購入・増改築などを行う場合に年末調整もしくは確定申告を行うことで12月3 1日時点での住宅ローン残高の1%が最長10年間(消費税10%で取得した場合は13年間)所得税等から還付される制度だった。
今回の改正により、住宅ローン控除期間13年の特例について入居期限が2022年12月末までに延長された。

またもともと所得制限が設けられている減税措置だが、今回床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は、減税条件が所得合計金額1000万円以下に引き下げられたことにも注意が必要だ。
新型コロナの拡大以降リモートワークが浸透し、都心からの移住や、郊外に小型のセカンドハウスを購入するケースも増えてきているが、今回の条件の厳格化で減税対象外となる物件 も少なくないだろう。投資対象としてマンションを購入する場合についても、条件をしっかりと確認することが重要だ。

住宅取得等資金贈与の非課税措置

住宅取得等資金贈与の非課税制度とは、住まいを新築・増改築する際に父母や祖父母から資金提供を受ける際、贈与税が一定額まで非課税になる制度だ。
もともとは2021年4月から非課税枠が上限1200万円までに下がる予定だったが、改正によって非課税枠の上限が1500万円となり、期間も2021年12月末までに延長された。
この非課税枠は贈与税の基礎控除110万円と併用が可能だが、受贈者の年齢や、合計所得金額が2000万円以下であることなど様々な条件がある。

固定資産税の軽減措置

住宅や土地などにかかる固定資産税は3年毎に評価額の見直しが行われ、通常ならば今年度は更新年のため2021年1月の地価公示をもとに評価替えをされる予定だったが、 2021年度に限り税負担を回避するための特例措置が設定された。
住宅地や農地、商業地などについて税額が増額する場合は前年度の税額に据え置くことができ、また税額が減少する場合は少ない税額が適用されることとなる。
東京オリンピックやインバウンド効果によりここ数年の地価は上昇傾向にあったが、新型コロナの影響で地価が下落している地点も増えている。この措置により、 コロナ不景気の中の増税は回避され税負担が軽減されることになった。

子育て関連の助成の非課税措置

小さな子供がいる家庭では、保護者の外出や仕事などの際にベビーシッターを利用する機会もあるだろう。
これまではベビーシッターや認可外の保育園を利用する際に公的な助成金を受けた場合、助成金が雑所得とみなされ課税対象となっていた。今回の改正では子育て関連の助成金については非課税とすることになった。
他にも一時預かり・病児保育などの子どもを預ける施設の利用料に対する助成や、生活・家事の支援、保育施設等の副食費や交通費などの助成についても非課税の対象となる。
何かとお金がかかる子育て世代には嬉しい改正だ。

教育資金などの贈与にかかる非課税措置

富裕層の祖父母などから子や孫に教育、結婚や子育てに対する資金の援助を受けると当然ながら贈与とみなされる。
30歳未満で前年の合計所得が1000万円以下の子や孫に対し、1人あたり1500万円までの贈与を非課税とする制度を2023年3月末までと2年間延長した。

しかしながら節税目的の制度利用を防止するため、課税対象が拡大されたことは要注意だ。
改正前では贈与者の相続開始前3年以内に贈与された一括贈与額の残額が贈与者の相続財産に含まれたが、改正後は3年以内という制限が撤廃され贈与者の亡くなった時点に使い切れていない残額が全て相続財産に加算されることになった(※受贈者が23歳未満や在学中の場合を除く)。
なお、教育資金の一括贈与による残額についても、これまでは相続税の対象になった場合の2割加算の対象外とされてきたが改正後は課税対象となっている。
また、結婚・子育て資金を1000万円まで一括贈与した場合に贈与税が非課税となる特例も2年間延長されたが、贈与者の死亡時までに使い切れなかった残額は相続税の2割加算の対象となったことにも注意したい。

税務手続きのデジタル化は道半ば

確定申告時期の税務署が混雑していることは周知の事実だ。コロナ以降は感染対策として入場制限を行う税務署も多い。
税務手続きのデジタル化は残念ながらまだまだだ。パソコンでの申告書類の作成や、スマートフォンを利用して納税手続きができるようにもなってきたが、対象はまだまだごく一部に限られている。
ここ最近の改正でも、個人の確定申告や会社員の年末調整の申告書への押印が不要となったり、30万円以下の所得税・贈与税の納税についてスマートフォンでの手続きが可能となったりする程度だ。
これでは税務署の行列は短くならないだろう。
書類を作るだけのオンラインサイトにしても使い勝手がいいとは言えず、万人におすすめできるものではないと感じる。どんな世代にも分かりやすく、使いやすいアプリケーションへの進化が求められている。



※この記事は一般的な情報提供を目的として、財務省作成の「令和3年度税制改正(案)のポイント」(令和3年2月)をもとに作成しております。
最新の税制や税に関する詳しいご相談は所轄の税務署や税理士などの専門家にお問合せくださいますようお願いいたします。

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