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世界のコロナワクチン接種状況

Shirotaromaru 2021.06.30

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新型コロナウイルスは世界を変えた。
未曾有のパンデミックは各国の経済活動を停滞させ、ニューノーマルと呼ばれる新しい生活様式を生み出させるほど大きな影響を与えている。
2021年6月上旬での世界の感染者数は1億7400万人、死者数は375万人に上る。

負けることのできない新型コロナウイルスとの闘いに、ワクチンという一筋の光明が差し込んできた。
英公衆衛生局はワクチンを2回接種することで変異ウイルス デルタ株に対する防御効果も高くなるとの分析を発表している。
集団免疫を獲得するためには人口の60%~90%ほどが接種を受けることが必要と考えられ、新型コロナワクチンの接種は世界各国で優先すべき課題として取り組まれている。




日本のワクチン接種状況

ご存知の通り、日本における新型コロナワクチン接種のスピードは世界的に遅れていると言わざるを得ない。
英オックスフォード大学が運営するOur world in Dataの提供するデータによると、2021年6月9日の時点では日本で1回接種を受けたことがある人数は約1450万人だ。
米国の約1億7173万人と比較すると約10分の1以下という状況である。


出典: Our world in Data(2021年6月9日)

このグラフからも分かるように、日本のワクチン接種者数は他の先進国と比較してかなり低い水準にある。
現在、日本の多くの自治体では65歳以上の高齢者への接種を行っており、64歳以下への接種は早くても6月中旬以降とみられている。
政府は大規模接種会場の設営など接種回数の増大を図ろうとさまざまな方策を重ねているが、現在1日あたりの接種回数は平均50~60万回に留まり、目標に掲げている1日100万回には到達していない。接種開始時よりは徐々にスピードが上がってきているものの、高齢者への接種完了は7月末頃の見通しとされている。

なぜ日本はワクチン接種が遅れてしまったのか

ワクチン接種を完了した人数が突出しているのもやはり米国だ。
新規感染者数は減少を続けており、アメリカ疾病対策センターCDCはワクチン接種を完了した場合は一部の場所を除きマスク着用なしでの行動を認める指針を発表している。
自国でワクチンを開発・生産できる強みや、認可のスピードの速さなどが奏功したと考えられ、日本のワクチン接種の遅れはこの点に劣っていたからとみられる。
接種記録や予約管理を一元化することもできておらず、DX活用の稚拙さも遅れの原因の一つだろう。

またワクチン接種の「打ち手不足」についても早急に解消が必要だと考えられる。
米国では予防接種のライセンスを持ち、日常的にインフルエンザなどのワクチン接種を行っていた薬局の薬剤師にも新型コロナワクチンの接種を可能とし、 薬局やスーパーマーケットへ直接ワクチンを供給することで接種機会を大幅に増加させることに成功した。
イギリスにおいては研修を受けたボランティアによるワクチン接種を行っている。
爆発的な感染の拡大に医師や看護師だけでは人手が足らなくなることを予測し、資格がない人材でも接種できるよう早急に法改正を行って人員を増強したのだ。このような臨機応変さはぜひ見習いたいところである。

ワクチン接種率を押し上げる工夫

米国ではワクチン接種の後押し策としてさまざまな取り組みが行われている。
中西部オハイオ州ではワクチン接種者に対し100万ドル(おそよ1億円)の抽選や、10代向けに州立大学の奨学金が当たる抽選を行い大きな話題となった。
NY州ではワクチン接種証明書を提示することで動物園や水族館の入場料を無料としたり、メジャーリーグの試合開始前の球場でワクチン接種を行った人に無料観戦チケットの配布を行ったりしている。
その他ビールやドリンクなどの無料券・商品券の配布や、釣り免許(米国では釣りをする際に免許の購入が必要)の交付など、新型コロナで打撃を受けている地域の店舗を潤す効果が期待できるものも多くある。



ワクチン接種ツアー

自国のワクチン接種スピードの遅さに耐えかねた人々が目をつけたのは、他国で観光客向けのワクチン接種を受けることができる「ワクチンツーリズム」だ。
いくつかの国で行われているが、中でも米国でのワクチン接種ツアーが人気を集めている。

2021年6月上旬の時点でNYやカリフォルニアをはじめとする20州以上で観光客へのワクチン接種を行っており、 州によって細かい条件は異なるが基本的には12歳以上(ワクチンの種類によっては18歳)でパスポートを持参すれば誰でも受けられるため、各国から多くの人々がワクチンを求め訪れている。
日本のいくつかの旅行会社も添乗員付きワクチン接種ツアーを販売しており、海外出張や会合への参加の多い会社経営者や富裕層からの申込みが増加しているようだ。

米国は入国を認めている海外国からの旅行者に対する入国後の隔離期間を4月から撤廃しているため、日本からの参加の場合、ワクチン1回のみの接種であれば最短0泊2日で完了するという。
なお、日本に帰国した際には日本のルールでの隔離が必要であることや、海外でのワクチン接種の場合副反応が起きても厚生省による補償の対象外であるなどには注意が必要だ。

今後のワクチン接種の課題

先に挙げた理由に加えオリンピック開催国であるという事情もあり、我が国での基礎疾患のない64歳以下の人々への接種開始時期はいまだ明確化されていない。
住民票を持たない人への接種など未解決の課題も多く、早急に解消を望みたいところだ。
国内でのワクチン製造拠点の整備を強化する動きや、予約キャンセル分を独自の方策で有効活用する自治体が増えてきているなどのニュースも増えてきている。
大企業による職域接種の実施もワクチン接種スピードを押し上げる要素として期待したい。
全ての人が速やかに、かつ安全にワクチンを接種できるようそれぞれの知見やノウハウを共有し、活用することも重要だ。誰もが安心して自由に生活できる日常を待ち望んでいる。

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