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デジタル資産NFT

Shirotaromaru 2021.05.25

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美術品や投資に興味のある方なら、最近「NFT」という言葉を耳にする機会が増えたのではないだろうか。
NFTは「Non Fungible Token」の略語で、日本語では「非代替性トークン」と訳されている。
NFTの台頭によりゲームやデジタルアートの世界は大きく変わり始めている。新しい資産と呼べるNFTの特色や今後の課題について取り上げてみよう。



NFTとは

NFT(非代替性トークン)は暗号資産などに用いられるブロックチェーンを利用したデジタルデータの一種だ。
非代替性という名の示すとおり、NFTは「唯一無二の、価値を生み出せるトークン」という性質を持つ。
NFTは一般的にブロックチェーン上に発行・流通しているものを指す。ブロックチェーンには情報の改ざんが非常に困難という特性があるため、NFTは「代替性がないことの証明」が明確に付与された存在となる。
つまりNFTの取引というのは、「偽造不可の鑑定書が付与された唯一無二のデジタルデータの所有権」を価値がある資産として売買し、その対価として暗号資産を得ることができるというものだ。

人気の高いNFT

概念の話だけでは分かりにくいので、実際に取引されているNFTをいくつか紹介しよう。
2021年5月時点でNFT化されているコンテンツには、ゲームのアイテムや、画像や動画などのデジタルアート、コレクションアイテムなどが多く存在している。

■ゲームのキャラクター
「クリプトキティーズ」というブロックチェーンゲームはNFTをメジャーにした先駆け的存在と言われており、現在でも高い人気を誇っている。
ゲーム上の仮想猫(=NFT)を集めて交配させ、生み出された新種の猫を売買して楽しむ単純な内容だ。
しかし交配によって生まれた希少価値の高い猫には高い価格がつき、中には1500万円を超える価格で取引が成立したケースもある。プレイヤーたちは希少種を産み出す交配を模索し、育成に夢中になっている。

ただのデジタルデータの猫に、なぜそんな高額な価格がつくのか?
それはその猫が世界にただ一つの存在だからであり、かつ新たな価値を産み出す可能性を秘めていると考えられるからだ。
珍しいものには高い値がつき、需要の高さから更なる値上がりが見込まれますます盛んに取引が行われるのは、現実世界の希少品に対する考え方となんら変わりがない。



■デジタルアート
NFTとデジタルアート作品は親和性が高く、多くの作品が流通している。
なぜなら、NFTには作成年月日や発行数、識別番号などの真贋を証明する情報が付与されているため、おのずと信頼性が高くなるからだ。

元来コピーが容易だったデジタル作品が、NFTとして発行することで信頼できるオリジナル作品として取引できるようになったことは大きなメリットだろう。
また、NFTのマーケットでは売買取引に仲介人を挟む必要がなく、アーティストが直接市場に作品を提示し、世界中の顧客と取引ができることも利点と言える。
アーティストに有利に働くだけでなく、マーケットの拡大にも効果は大きい。

2021年2月、NFTマーケットのNifty Gatewayにて、ドナルド・トランプ米前大統領を風刺したと思われるデジタルビデオ作品が約660万米ドル(約7億2000万円)で落札され、世間を騒がせたことは記憶に新しい。
しかしそのひと月後にはイギリスの最大手オークションハウス クリスティーズで、デジタルコラージュ作品が約6930万ドル(約75億円)で落札され、NFT取引の最高額記録をあっけなく更新してしまった。
落札額もさながら、名高い歴史を持つクリスティーズがNFT作品を扱ったことも、またこのオークションを行うに際し暗号通貨イーサでの決済を可能としたことも、アートの世界に大きな驚きを与える結果となった。

■トレーディングカード
様々なNFTの中において、現在最も勢いが増しているのは米プロバスケットボールリーグのデジタルトレーディングカードを扱う「NBA Top Shot」と言われている。
試合で披露されたスーパープレーの動画をNFTとして公式サイトから購入したり、ユーザー間で売買したりできる仕組みとなっている。
2021年3月末の時点でユーザーは30万人以上に上り、売り上げはなんと450億円を超える。新規の動画パックは完売が相次ぎ、購入できない状況が続くほどだ。
そもそもトレーディングカードは長年愛好家の間で高額取引されていた歴史がある。まさにNFT化にはうってつけのカテゴリーだったと言える。


拡大が続くNFT市場

「NBA Top Shot」と「クリプトキティーズ」の開発企業でもあるダッパー・ラボ社は、2021年3月にNBA伝説のプレイヤー、マイケル・ジョーダン氏やハリウッドスター、大物アーティストなどの出資のもとで約330億円の資金調達に成功したと発表した。
USAトゥデイによると、同社の企業評価額は約26億ドル(約2900億円)に達したとみられている。
NFT市場はコアなファンやコレクターたちだけでなく、大きな影響力を持つ財界人や投資家からの注目も集め、投資対象として大きく拡大している。

NFT市場の課題

米メジャーリーグやNFLなど、巨額マネーが動くスポーツも続々と参入し始め、その市場規模の拡大はもはや留まるところを知らない様相だが、課題も数多く残されている。
決済手段である暗号資産イーサリアムの拡張性や手数料の高騰、マイニングによる環境問題などをはじめ、他資産と比較して流動性が劣る点、また法的・税制的にいまだ未整備であることなどもリスクとして挙げられている。

課題をクリアして、市場を整備・活性化していけば魅力的なコンテンツや投資家層の厚みも増え、投資対象の1つとしての地位も確立できるだろう。一過性のブームで終わることなく、今後一層の拡大を期待して注目していきたい。

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