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幻の切手「見返り美人」。昭和の趣味人が没頭する切手収集の魅力とは?

焔(Homura) 2021.03.12

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デジタル化社会の進歩とともに「手紙を送る」機会が少なくなりましたね。昭和生まれの方なら誰もが一度は経験しているのが切手収集でしょう。

私も小学生の頃は夢中になって集めたものでした。その頃どうしても欲しかった切手があります。それが「見返り美人」です。

親に買ってもらって、実際に手にしたときは子供ながらも大きな満足感で満たされた記憶があります。切手収集という趣味は半世紀前にブームとなりました。

今一度「見返り美人」について振り返ってみましょう。

1970年代に流行した切手収集という趣味

かつて子供から大人まで多くの人々を夢中にさせた切手収集。その魅力は、誰でも簡単に始められる手軽さと奥深さの両立にあります。

今となっては何か用事があればメールやSNS、通話アプリを使うのが当たり前ですが、当時切手というのは人々にとって非常に身近な存在でした。

切手の額面は数円から数十円程度で、子供のお小遣いでも簡単に買えるもの。

その一方で、切手の図案は動植物や建物、キャラクターなど多種多様で、芸術性の高いもの、地域限定のものなどもあります。

テーマ別に収集して自分だけのコレクションを完成させた時の達成感はひとしおです。

また発行数が少ない切手は希少価値が高く、プレミアが付くこともあります。

一般に使用済み切手になると価値が下がるのですが、珍しい消印が付いているものだと反対に未使用切手より高値で取引されることも。ただしその場合は、消印がしっかり読み取れるほど鮮明でなければなりません。

こうしたさまざまな要素はコレクターを殊更夢中にさせました。ブームの時期は至るところに切手屋があり、足しげく通う方は絶えません。送られてきた郵便物に貼られた切手を一生懸命剥がす姿も見られました。

切手コレクターの中で最も人気の高い「見返り美人」とは?

数ある切手の中でも、貴重なものというのはやはりコレクターを唸らせます。切手コレクターの中で最も有名で人気があるものと言ったら、やはり「見返り美人」でしょう。

見返り美人は1948年に日本で発行された切手であり、絵柄は歴史の教科書にも載っている、江戸時代の浮世絵師「菱川師宣(ひしかわもろのぶ)」が描いた同タイトルになっています。

見返り美人の人気の理由はいくつかあります。まず1つは、普通に使用するためではなく切手コレクター用に発行されたこと。

2つ目は非常に大判であること。現在発行されている普通切手のサイズは縦22.5mm、横18.5mmですが、一方で見返り美人の1枚あたりサイズは縦67mm、横30mmです。倍近くの大きさでしかも縦長ですから、インパクトが違います。

そして3つ目が、その芸術性。

ただでさえ浮世絵という題材。1948年というと終戦直後で印刷技術が未発達だったため、本来の鮮やかな色彩は再現できず、茶色一色の切手となりました。

しかし単色になったからこそかえって菱川師宣の繊細なタッチが際立つという評価もあり、マニアたちを虜にしたのです。

切手・見返り美人の歴史

見返り美人は元々、コレクター向けに切手を発行するキャンペーンである「切手趣味週間」のシリーズ第2弾として誕生しました。浮世絵を題材とした切手はこれが初です。

当時から今に至るまで切手・見返り美人の人気は高く、特に1970年代の切手収集ブームが起こった要因の1つとも言われています。

そんな切手・見返り美人ですが、その人気の高さから後に続編が発行されています。

・1991年、額面は62円。郵便事業120周年記念切手として、従来の茶色一色ではなくフルカラーが登場しました。
・1996年、額面は80円。過去に使われた絵柄の切手を販売する「郵便切手の歩み」シリーズとして、単色・カラーの双方が登場しました。

1991年のフルカラー登場時には120周年ということもあり、コレクターたちはこぞって買いつけたようですが、やはり1番人気は今でも1948年の初回版のようで。初回版は累計で150万枚しか発行されなかったため希少性が高いのです。

古き良き昭和時代。そんな当時を思い出す「見返り美人」ですね。

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