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カーレーサーの世界とその先にあるもの

 2021.02.28

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カーレースの世界は決して甘いものではありません。だからこそ、その世界での成功は、私の背中を見るスタッフによい影響を与え、また私自身を新しいステージへと導いてくれています。

今回は、幼少期からスーパーカーに憧れ、現在はレーサーとしての傍ら、不動産の賃貸や売買をはじめ、ホテル事業、レーシングチームの運営、介護事業、輸入車販売、esports事業などを多角的に経営する私から、有言実行と社会貢献が与える効果についてお話しします。

スタッフに有言実行の姿を見せる



現在私はカーレースに参戦していますが、厳密にいえばプロレーサーではなく、セミプロのような位置づけにいます。しかし国際ライセンスを取得し、リザルトに名前が残り表彰式があるような公式戦に参戦し、本気で賞金の獲得を目指すという点ではプロのカテゴリに身を置いていると考えています。

40歳を超えてからレースの世界に足を踏み入れ、ここまで真剣に取り組むようになったきっかけは、一言でいえば「社員に有言実行する姿を証明したかった」ためです。口だけ大きなことを語って行動できず、結果を出せないままになりたくないと考えていた私は、トレーニングすることで表彰台まで登れるという証明をしたいと考えました。仕事だけでなく、趣味の分野でも有言実行することで、スタッフから私への信頼感が強まり、同じ方向を向いて仕事をできると思ったのが大きなきっかけです。

スタッフが最初に私の挑戦を聞いたときは、趣味としてやるんだろうな、車好きの延長だろうなと思っていたでしょう。いきなり自分のビジョンを語っても、私と同じ理解ではなかったと思います。しかし自分が毎週のようにサーキット場に足を運び、時間とコストをかけて取り組んでいる姿を見たスタッフには、私の本気が伝わりました。このチームで優勝して恒志堂の名が広まれば、最終的に本業にもつながっていくと徐々に理解してもらえた感じですね。

時には壁にぶち当たってタイムが伸び悩むとか、本番で結果を出せないこともありました。しかしその上で練習と本番の差を埋めていく姿とか、レースで表彰台に上がる姿を見せたことで、スタッフの私への見方が変わったと思います。

とはいえ、挑戦して成功する姿を見せるのは簡単ではありません。レースに関していえば、0.5秒とか1秒とかのタイムごとに壁があります。1分30秒で走れるようにはなったけど、1分29秒で走るには並大抵の努力では到達できなくて。年間で1,000ラップ走ってもその壁を越えられないことが何度もありました。でもその壁をあっさり破ってしまうプロドライバーがいる。そうなると気持ちが後ろ向きになって、車の操作と気持ちが合わなくなるんです。

そういうときは、ある意味何も考えずに楽しもうという気持ちで走ります。今日はもうこのコーナーのタイムを改善できないと悟ったら、何も考えずにリラックスして走ります。すると不思議とその壁を越えられるんですね。

今思えば、力んでいるんですよね。無駄な力が想像以上に入っている。レース中は360°広い視野を持たないといけないのですが、課題であるコーナーに執着するとそこしか見えなり、トータルでタイムが遅くなります。なのでリラックスして8割くらいのペースで優雅に走ると、それがベストラップになったりしますね。後からデータを見ると、凄くバランスのいい走りになっていることもあります。

これはビジネスにおいてもスポーツにおいても同じ。よい成績が出せる勝負は、凄くリラックスしています。緊張感はあって集中もしていますが、リラックスしながら楽しんでいるときに勝てますね。こうした環境をコンスタントに作れるよう、リラックスできるトレーニングも取り入れています。

無理だよねという空気を出したらチャンス



レースを始めた当時、「大丈夫?」「無理でしょう」と口に出す者はいませんでしたが、心の中では優勝できないと思っていた人はいると思います。しかし一度優勝して表彰台の一番上に上がるとそれ以降、優勝は夢物語ではなく、どうしたら優勝できるかという共通の目標になりました。

その優勝という夢を現実にした影響は大きくて。社員と行く懇親会や飲み会の場で、ひらめいた新事業や目標をその場で語ることがあるんですが、以前は空想とか妄想と思われがちでした。しかし今では私のことを「本気でやる人だ」「言ったことを行動に移す人だ」ととらえる社員が多くなったので、新しい事業をよーいドンで始めるときのエネルギーの量が変わりました。弊社では毎年新規事業を始めており、今年であればesportsとか、アニメや漫画の世界に入っていこうと考えており、そういった提案や提言も真剣に聞くスタッフが増えました。

自分は仲がいい経営者仲間から「超能力王子」とあだ名をつけられたことがあります。まるで未来を予知するような発言をしているからと。たとえばレースで優勝するなんて話は、最初は誰も本気にしていませんでしたけど、自分は言い続けていました。結果的に優勝を果たして、発言を現実のものにしたわけですね。これがまるで未来を予知しているように見えるんです。実際は有言実行して未来を作った結果なんですけどね。

なので、今私が掲げている「札幌をesportsの聖地にする」という目標は、5年も10年もずっと言い続けます。そして10年後に市民や国民が札幌を聖地として扱ったら、私が超能力で予言していたように見えますよね。佐藤は10年前から言っていましたと。みんながピンと来ていないとか、そんなの無理だよねという雰囲気を出したときは、私にとってすごいチャンス。社外で最初に発した言葉が賛同を得られないときは、大きなチャンスととらえています。

富の先にあるのは社会貢献


こうして有言実行を繰り返して成功を収めても、自分が死んだあとはお金も車も、名声も持っていけません。誰しもが亡くなった後には何も持っていけないわけですから、私は死んだ後に何をどれだけ残してみんなとシェアできるかが人生のゴールだと考えています。

私はフェラーリに乗りたいという理由で独立起業しました。自分の幸せのためですね。その後、家族ができれば家族の幸せを考えるようになり、社員を雇用すれば社員とその家族を守る責任を感じ、今は納税や寄付を積極的に行い、国民や第三者を守るという気持ちに変わっていきました。徐々に成長して変化してきたわけですが、それにはあるきっかけがあるんです。

自分が成長してステージが変わっていくと、そのたびに目標になる人物が出てきます。今までは視界に入っていなかったのですが、自分のペースが上がっていくとその人の背中が見えてくる感じですね。その方に旅行や食事の楽しみ方を聞いてみました。

私は海外旅行の際には、国際線のファーストクラスに乗ったり、ヨーロッパの五つ星ホテルでスイートルームに泊まったりしています。少なくとも移動手段と宿泊は最高峰を極めたんです。なので私よりも上のステージにいる方はどんな生活をしているのかと、どんな感性をお持ちなのかと気になったんです。

すると「A君がホテルをオープンしたから泊まりにいく」「Bさんがイタリアンレストランを開いたので食べにいく」というように、自分がお世話になった人や友人に恩返しをしていくという基準になるというんですね。たとえ狭いホテルであっても小さなレストランであっても、その人が喜んでくれるなら利用するというスタンスなんだそうです。

本当の超富裕層というのは、我々が非日常と思っている環境が日常です。つまり非日常がない。そうなると非日常を求める必要はなく、恩返しとか社会貢献とか、お世話になっている人への協力とかを考えるんですよ。それを聞いたときはなるほどなあ、と思いましたね。自分がそういうステージに行かないといけないと思って追いかけていくと、自然と社会貢献の気持ちが生まれてきます。

私が成長する姿を見せ社員を刺激し、私自身が成長して社会に貢献する。それこそが、今私が目指すべき目標の究極系だと思いますね。
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