分散投資法「ヘッジファンド」の魅力とは?
焔(Homura) 2021.02.23
前回のブログでは「米個人投資家の行先は?ネット証券アプリ「ロビンフッド」で考える日米金融リテラシーの温度差」について書きました。
そこで今回はヘッジファンドについて個人的な意見も交えつつ、話したいと思います。
そもそもヘッジファンドとは、投資運用のプロが投資家からお金を集めて運用する手法の1つです。
これだけだと投資信託と同じですが、ヘッジファンドはその中でもリスクを徹底的に回避(ヘッジ)することを特徴とします。
例えば、2008年に起きた「リーマン・ショック」では100年に1度とまで言われた大不況に陥り、多くの投資家たちを苦しめました。これまでリスク分散の王道とされてきた単純な資産分散投資も、大規模な不況にはあまり効果が見られませんでした。
一方でヘッジファンドはリスクを徹底的に回避することで、景気の良し悪しに関わらずリターンを目指すことができます。
つまり多くの投資家たちが苦しんでいたリーマン・ショックの時でも、ヘッジファンドを行なっていた人々はリターンを得ていたかもしれないということです。
ヘッジファンドで成功するカラクリは投資信託との違いにある
どうしてヘッジファンドが景気に左右されず成功できるのでしょうか? それはヘッジファンドが「私募型」のファンドだからです。プロに資産運用を任せるという手法で有名なのは投資信託――これは「公募型」のファンドです。
公募型ファンドは証券会社や銀行などさまざまな場所で投資家を募っており、誰でも簡単に投資できる点が魅力です。
しかし投資家を公募することで起きる問題が行政の監視。つまり集めた資金をどのように扱うかが随時監視されており、運用方法が制限されてしまうということです。
これにより、投資信託では利益を徹底追求するような大胆な手法が採れなくなってしまいます。
一方でヘッジファンドは私募型。資産運用のプロが私的な募集で投資家から資金を集めることで、行政の監視が付きません。そのため例えばレバレッジ、空売りの多用、先物取引の利用など、状況に応じて多彩な戦術を採って、リターンを得ることができます。
ヘッジファンドが世間に認知されない2つの理由
このように安定性が魅力のヘッジファンドですが、一般には「ハイリスク・ハイリターン」というイメージが持たれていることが多く見受けられます。この原因は2つ、
「広告を出せない」
「メディアの歪曲」
です。
1つ目の「広告を出せない」は単純な話であり、ヘッジファンドは私募型ですから公募できないということです。
これは金融商品取引法によって定められており、他にも「これだけ利益を出しました」という実績の開示なども行えません。
一般の投資家がヘッジファンドにアクセスするためには、ヘッジファンドの専門家(ゲートキーパーなどと呼ばれます)に相談することになるため、得られる情報は極めて少なくなります。
そして2つ目の「メディアの歪曲」ですが、ヘッジファンドのような「リスクが低く安定している」という堅実的な思想による手法は、メディアにとって面白くないということです。
雑誌の売り上げあるいはテレビの視聴率に貢献するのは、見ている人々が「すごい!」と思えるような派手な手法。
そのためヘッジファンドの堅実性については取り上げられず、見ている人は「よく分からないけれどハイリスク・ハイリターンなんだな」と思ってしまう訳です。
ただし最近ではそうしたメディアの影響もあって、リスクを「ヘッジ」せずにリターンを狙うヘッジファンドの需要・供給も出てきています。
実際に利用する時は、その点も含めて誰に相談するかを慎重に吟味したほうが良さそうです。
ヘッジファンドのデメリット
ここまでのことをまとめると、ヘッジファンドのメリットは景気の良し悪しに左右されず、高いリターンを期待できるということ。しかし全くデメリットがないというわけでもありません。以下でその点を確認しておきましょう。
情報を集めにくい
公募されていない手法ですから、募集している運用家が見つからないどころか、そもそもヘッジファンドの実態を掴むことにも難儀します。また投資信託と違ってヘッジファンドには目論見書や報告などの義務がないため、実際に運用家が自分の資金をどのように扱ったか分からないことも多々あります。
参加するためには条件が要る
投資信託の場合、商品によって1,000円や10,000円などの非常に低額からでも始められるのが魅力ですが、私募型のヘッジファンドではそうは行きません。少ない人数から資金を調達しなければならない関係で、最低でも数百万円~一千万円などのまとまった投資が必要になります。
それに伴って、どこのヘッジファンドでも応募の際には規定が設けられていることが普通です。大抵の場合は、相応の資産を持っている方でなければならないということになるでしょう。
破綻のリスクはけっしてなくならない
リスクを徹底的に避けることが特徴のヘッジファンドですが、それでも必ずしも失敗しないという訳ではありません。運用しているのが人間である以上、どのような手法でも損してしまう可能性はあります。
実際に昨年のコロナショックでは、過去にない大きさの値動きによって、ヘッジファンドですら損を出してしまうところも少なからず見られたようです。
「景気によらずリターンを出す」というメリットも、あくまで「他の手法と比較すれば」という点を重々承知しておく必要があるでしょう。