世界最大手のデビアス社が決めるダイヤモンド価格の仕組み
焔(Homura) 2021.02.18
貴金属に興味のある女性は少なくないと思います。特にダイヤモンドは世界で最も流通している石ですので、普段から目にする機会も多いでしょう。
私自身アメリカ時代にダイヤモンドのバイヤーをしている会社とご縁があり、とても貴重なダイヤモンドなどを拝見させていただきました。
ただ素人の目では100万ドルのダイヤと200万ドルのものを見分けることができません。私がそうでした…
その時に知ったのが「RAPAPORT DIAMOND REPORT」という情報誌の存在。ダイヤモンドの価格が分かる唯一の情報誌で、デビアス社が発行しています。
友人の勧めで現在もこの雑誌を定期購読しております。確か年間180ドル程度で、私はWeb版(英語のみ)を見ております。
今回はそんなダイヤモンドの価格や流通の仕組みに関するお話しです。
ダイヤモンド業界を支配するデビアス社
デビアス社とは、イギリスに本社を構える巨大な企業です。デビアスの目玉商品は何と言ってもダイヤモンドなのですが、単なる販売にとどまらず、世界中のダイヤモンドの生産量と流通量をコントロールして、価格の適正化や価値の維持にも努めている会社でもあります。
鉱脈調査、採掘などさまざまな技術の進歩によって、近年ダイヤモンドの生産量は飛躍的に多くなりました。
1700~1800年代、インドやブラジルなどで人の手によって行なわれていたダイヤモンドの生産量は、せいぜい年間十万カラットほどしかありませんでした。しかし現在はたった1年で1億カラットを超える程の生産量があります。
これは喜ばしいことではあるのですが、問題もあります。生産量が多くなり過ぎて需要が供給を上回るようになると、ダイヤモンドの価格が急落する恐れがあるということです。
実際に1867年、南アフリカ共和国で巨大なダイヤモンド鉱脈が発見されて飛躍的に生産量があがったとき、乱売が発生して多数の採掘業者が経営難に陥った歴史もあります。
デビアス社が行なっているのは、このような乱売を防止するための仕組み作りです。
具体的にはダイヤモンド鉱山一帯を買収、もしくは新しい鉱山が発見された場合はそこから生産されるダイヤモンドを全て買い取る保証をするなどして、流通量をコントロールするのです。
その結果、ダイヤモンドの価格は安定して高価な資源となり、デビアス社自身もシェア80%を超える巨大独占企業に発展します。
デビアス社の定めるダイヤモンドの価格基準
そんなデビアス社が月に1度発表しているのが「ラパポート・ダイヤモンド・レポート」です。このレポートには、ダイヤモンドが品質・大きさごとにどれぐらいの価格になるのかが書かれており、各売買業者の取引基準となるものです。
つまるところ、ダイヤモンドの価格は月に1度大きく変動するということ。その肝となるのが、ここまでのお話の中でも触れてきた需要・供給のバランスです。単に「ダイヤモンドの需要がある/ない」だけでなく、「今はサイズの大きいダイヤモンドが求められている」など、特定の人気によって一部の商品だけが高くなる場合もあります。
その他、流通経路や外国為替相場などによって販売業者ごとに価格が変わっていきます。特に「ラパポート・ダイヤモンド・レポート」のダイヤモンドの評価額はドル建てですから、日本で購入する場合は円高・円安によってでも変わることに留意しておく必要があります。
ダイヤモンドの品質を表す4Cとは
当然のことながら、上にあげた要素以外にも、ダイヤモンドそのものの品質は価格に大きく影響します。ダイヤモンドの品質を決めるのは通称「4C」と呼ばれる、米国宝石学会(GIA=Gemological Institute Of America)の定める4つの鑑定基準です。
◆ Color(色):
濁りがなく無色であるほど良い(カラーダイヤモンドは除く)。
◆ Cut(カット):
ファセット(カットの施された面)と光の相互作用を評価する。基準は輝きや明るさの他、虹色の輝きがあるか、明暗部分のパターンは美しいかなどにもよる。
◆ Carat(カラット):
重量があるほど良い。なお1カラット=200ミリグラムである。
◆ Clarity(クラリティ):
不純物や傷がなく透明度があるほど良い。
しっかりした国際基準があって初めて成立するのがダイヤモンドの取引きなんですね。業界の方ではなくてもRAPAPORT DIAMOND REPORTは購入することが可能です。
雑誌版の紙面には、ダイヤモンドの重さや色だけではなく、形状(ラウンド・ペアシェイプ・マーキースなど)・グレードごとに、1ct換算の価格が一覧で掲載されています。
世界でダイヤモンド相場を毎月見るのも楽しいものです。