馬主は「投資」か「趣味」か?競走馬の馬主になるメリットと条件のまとめ
焔(Homura) 2021.02.09
私自身乗馬はしますが競馬を特に趣味とはしてはおりません。このところ良く耳にする投資対象としての「馬主」というワードですが、過去にも何度か「馬主になりませんか?」そんなお誘いは受けてきました。
馬は頭がよく美しい動物ですので、趣味として「育てる」のは楽しいことだと思います。
今回は、
「投資対象としての馬主にはどのようなメリットが考えられるのでしょうか?」
「馬主になる条件は?」
そんなテーマでお話ししたいと思います。
レースに勝利した時に賞金を得られるメリット
馬主になるメリットと聞いて多くの方が最初に思い浮かべるのは、レースの賞金でしょう。レースに勝利した時の賞金は、馬主が80%を得られるようになっています。(残りの20%は、調教師10%、騎手5%、厩務員5%という配分です)
日本で有数のレースである「日本ダービー」の場合、1位の賞金は2億円となりますから、もしも勝利を収めることができれば1億6000万円が手に入る計算です。
ただし競走馬がレースに勝利するのは非常に難しいことです。基本的に、このメリットを頼りに馬主になることはおすすめできません。
(詳細は後述)
社会的ステータスを得られる
賞金以外にも、「所有している馬がレースに勝利した」ということ自体が報酬になる場合もあります。JRA(日本中央競馬会)では、その1年で特に活躍した馬の関係者に対してJRA賞を授与しており、馬主が社会的に注目を浴びる機会が得られます。JRA賞とまで行かなくても、大きなレースに勝利すれば競走馬や騎手と並んで1枚の写真に収まることもあるでしょう。
このように優秀な馬を所有する馬主は、「競走馬を育てられるだけの高額な資産を持っている人物」と見なされ、社会的なステータスを得ることができます。
競馬発祥の地であるイギリス、近年になって競馬が盛んになり始めているドバイなどの中東では、特に馬主の社会的地位が高い傾向にあります。
競馬関連組織から得られる特典
例えばJRA(日本中央競馬会)の馬主になると、次のような特典が得られます。・競馬場に無料で入場できる
・馬主専用の駐車場を無料で利用できる。
・各競馬場にて、馬主専用の観戦席でレースを見られる。
・所有する馬が出走する時、パドックの馬主エリアに入場できる。
・所有する馬がレースで勝利した時、ウイナーズサークルで記念写真を撮影できる。
・美浦・栗東にあるトレーニングセンターと、付近の専用宿泊施設を利用できる
どれも競馬好きであれば魅力的な特典ばかり。その他にも馬主として登録する組織(地方競馬など)によって特典が付与されます。
※小口化して競走馬に出資する「一口馬主」では、これらのメリットは得られません。
馬主になる条件とは
馬主には「個人馬主」「組合馬主」「法人馬主」という3つの種類がありますが、ここでは大部分を占める個人馬主になる条件について見ていきましょう。例として「中央競馬」の個人馬主になる場合、JRAに必要書類を提出して登録申請を行い、審査に合格する必要があります。重要なのは審査の内容であり、過去に重大な犯罪歴がないなどの基本的な事項の他、「過去2年の所得がいずれも1700万円以上である」、「継続して保有する資産額が7500万円以上である」が要件として定められています。
地方競馬では「年間の所得金額が500万円以上」など要件が比較的緩い傾向にありますが、いずれにせよ馬主になるためには、競走馬の購入・飼育・調教にかかるコストを考慮してそれなりの資産家である必要があるわけですね。
競走馬への「投資」は成功が難しい?馬主はあくまでも「趣味」として
上のメリットの項目では、「レースに勝利することで賞金を得られる」とご説明しました。しかし実際には賞金目当てで馬主になることはおすすめできません。高額の費用をかけてようやくレースに出走できる競走馬ですが、必ずしも勝利を収められるとは限らないためです。JRAの集計データによると、競走馬1頭当たりの「平均」年間収入は約723万円だそうで。しかし各種費用を差し引くと、馬主の手元にはほとんど残りません。
しかもこれはあくまで平均の話。競走馬の半数以上は1勝もできないまま引退するとも言われています。つまりほとんどの馬主は赤字というわけですね。
したがって馬主はお金を目的とするのではなく、
・競馬が本当に好きな人の趣味として
・優秀な競走馬を持つという夢として
考えるのがベストかと思います。
「馬主になる」という行為は、夢と趣味を追う、そのような目的意識で考えれば心も豊かになります。自然と動物との触れ合いで癒されることでしょう。
その目的であればサラブレッドの馬主を目指す必要もありませんし、誰にでも始めることが可能な趣味に違いないと思います。