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この先どうなる? 中国のクルーズブーム

NOBLE STATE NEWS 2016.11.21

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 中国のラグジュアリーニュース Jing Dailyで、中国人観光客のクルーズ熱と大型客船の建造が活況を呈している様子を伝えています。

 いま、毎年2桁成長を続ける中国のクルーズ人口増加に、世界のクルーズ会社から熱い視線が集まっています。中国クルーズ・ヨット協会の副代表チェン・ウェイファン氏によれば2020年までに、中国のクルーズ人口は250万人に、2025年までに450万人、2030年までに700万人に達するだろうということです。ちなみに2014年は70.3万人、2015年は98.6万人で年間成長率は40.2%です。

 そしてこの勢いに乗ろうと、世界のクルーズ各社は中国企業とのジョイントベンチャーに動き、市場での地位確立に躍起になっています。

 業界最大手のカーニバル・コーポレーションは中国船舶工業集団(英文名:China State Shipbuilding Corporation 略称:CSSC)と国際的な投資銀行である中国国際金融(China International Investment Corporation , CIIC)との合弁を発表。詳細は明らかにされていませんが、カーニバルはすでに中国で「ビスタクラス」の船を2隻建造中。またCSSCとイタリアのフィンカンティエリ社との合弁も始めているようです。

 業界二位のロイヤル・カリビアン・クルーズはオンライン旅行サイト大手のCtripと35%ずつ出資し、ジョイント・ベンチャーのスカイシークルーズをスタートしました。

 クルーズ会社ばかりでなく、異業種からの参入もあります。マレーシアのコングロマリットでカジノを展開するGentingも、中国市場を視野に入れたクルーズ事業に5000億円を投資すると発表しています。

 このクルーズブームで造船業界も勢いづいています。

 ノルウェイアンクルーズ、プリンセスクルーズ、コスタクルーズ、MSCなどがいま新しい船を造っていますが、新しい船は中国人客向けにカスタマイズされているといいます。中国人客向けにカスタマイズ? デッキの上だとかインテリアがチャイニーズスタイルになっているとか、そういうことかと思ったのですが、どうもそうではないようです。

 ハード面では中華料理のレストランを多くすることと、豪華なカラオケル-ムをつくること。ソフト面では中国語を話せるスタッフがいることと、中国語版のエンタテイメントが楽しめることだそうです。

 また中国のクルーズ業界ではカリビアンクルーズやメディテレーニアン(地中海)クルーズと並ぶような商品として、東南アジアの国々を巡る「アジアテレーニアン・クルーズ」を商品化したい夢があるといいます。

 しかしそこで立ちはだかるのが港湾インフラの問題。中国では自国の港湾インフラ整備をここ数年、急速に進めており、また日本、韓国、台湾も、2025年までに中国のクルーズ人口が450万人になるという数字を受けて、港湾整備を進めています。しかし、ベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシアなど東南アジアの海沿いの国々は大型客船寄港のための港湾整備が後れているのです。

 これに対しては、中国の国内クルーズ産業が急速に成長していることから、中国企業自身が海外の港湾インフラに投資する流れになるだろうと見られています。

 アジアテレーニアンクルーズというのは確かに魅力的であり、そういう航海が実現すればいいなと思います。しかしちょっと心配になったのは、Jing Dailyの記者は東南アジアの港湾が整備されて中国と東南アジアへのクルーズ航行が盛んになれば、そのことが南シナ海の領海問題に対するソフトパワーとして働き、よいことであると述べているのです。

 豪華客船をどんどん航海させて、南シナ海の実効支配を強化しようということでしょうか。それは困りますよね。 ちなみに写真はロイヤルカリビアンが運航する豪華客船「レジェンド・オブ・ザ・シーズ」がマレーシア、コタキナバル北東にあるガヤ島を通過する所。まさに南シナ海を行くところです。



参照サイト:Luxury Daily

cover photo: JasonThien “MS Legend of the Seas Cruising Into South China Sea ”



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