高尾山頂上決戦
Mimi 2018.07.23
このブログを読む方にお断わりしておかなければならない。題名の「頂上決戦」とは、高尾山頂へ赤ん坊の孫を運ぶ際、私の買ったバギーか、息子のバギーか、どちらのバギーが上るかという、他愛ない争いの記録にすぎない。
高尾山は、東京生まれの私が子供の頃から親しんできた山である。はぁはぁ息をきらして上るハイキングに喜びは見いだせないのだが、高尾山は違う。登山口で、リフトにするか、ケーブルカーにするかの選択をするだけで、かなりの高さまで登れてしまう。(勿論足で上ってもたいしたことはない。)すると、東京都なのに、フィトンチッドが満ち溢れている山の中に身を置くことができる。おまけに、高尾山は霊山で、薬王院にお参りすれば、ご利益があって、幸せに生きて行くことができる。(と、うちの家族は信じている。)薬王院から20分かけて歩き、山頂に辿りつき絶景を眺めるのも良いが、薬王院から即Uターンして戻っても、十分山登りした気分が満喫できる。なのに、時間はといえば、朝9時に都心の家を車で出ても、お昼までには帰れるという近さである。
ミシュランが三ツ星を付けるよりずっと以前から、わたしは外国の友人が来日すると、高尾山に連れて行くことにしている。誰もが、東京からこんな近いところに自然が一杯の山があることに驚嘆し、薬王院でお参りしたり、おみくじをひいたりするのも楽しみ、大満足してくれる。
この度は、うちの孫のゲンちゃんの高尾山デビューが目的だ。行く日が決まってから、私は密かに高尾山用ベビーカーの選定に取り掛かった。息子夫婦が使っているのは、タイヤの太い3輪のバギーで9キロもある。先日お嫁さんと一緒に銀座のエレベーターがない画廊に行った時には、階段を持ち上げられず、一階に置いておくしかなかった。その後、甘味屋さんに寄った時も、折りたたんで狭いスペースに入れるのに難儀した。高尾山行きには軽いバギーが良い。
インターネットで検索。フランスやイタリアの物は色もきれいでカッコ良い。だが、片手に赤ちゃん、反対の手にバギーを軽々持っている写真に惹かれて見ると、バギーの重量が5キロ近くあるものばかり。もっと軽いのはないの?調べた中では、日本のA社のバギーが最軽量だった。おしゃれとは言えないが、ちゃんと日除けもついているし、下部は荷物置きになっている。ワンタッチで折りたため、自立する。A社は大手だから、安全性も問題ないだろう。実用重視でそれを注文。届いたバギーは、3キロ。持ってみると、確かに軽い。これなら薬王院に上る階段も簡単に持ち運べる、とにんまり。お嫁さんの真由ちゃんにゲンちゃんを連れて来てもらい、「試乗」も済ませた。
さて、高尾山行きの日、新しいバギーを車に積もうとすると、息子が拒否。例の重たいバギーを持って行くという。こんなに重くては、薬王院への階段が上れないじゃない、ぎっくり腰になるわよ、と言っても聞く耳を持たない。大丈夫、持てると言い張る。僕が持つんだからいいじゃないか、と。
息子に寄れば、A社のバギーは、車で言えばTOYOTA車みたいな存在だ。それなら安全、と思うが、車にこだわる息子は、「そんな細くて小さいタイヤ、乗り心地悪いよ。」と、私のバギーを見て言う。確かに息子のカイエンGTSのタイヤは太く、自分の子供も太いタイヤのバギーに載せたいらしい。
結局どちらのバギーを使うかは、高尾山に着いてから決めることになった。車のトランクにバギーを二台積んでシュッパーツ。
それから、高尾山の駐車場まで和やかな時間が過ぎた。家族一同、楽しい遠足気分を満喫。さて、到着後駐車場で、後ろのトランクからバギーを下ろす時が来た。決戦の時だ。一応二台とも下ろす。
私は、最後のアピールを試みる。「こっちの方が軽いでしょ。」でも、心の中では既に負けを認めていた。息子にとっては、重いバギーを持って階段を上るなんて、愛情表現の一つに過ぎない。父親の愛はすべてに勝つ。わたしのバギーは、車のトランクに後戻りだ。
ケーブルカーを降りてから、息子は、悠々と自分のバギーを押して歩き、時には背後に引く。すると後から歩く私たちはご機嫌なゲンちゃんと向かい合わせになり、親子4代にこにこしっぱなしだ。これを息子は狙っていたのか?
薬王院の階段下に着くと、ママが赤ちゃんを抱っこ。息子はバギーを颯爽と持ち上げ、スタスタ階段を上って、てっぺんへ。達成感に満ちた表情だ。
結局、私のバギーの出番はなかった。でも、私の心は何か満ち足りているのだ。こんなに愛情深く力持ちの息子を育てたのはこの私、いう喜びなのかな。