ロシアへの旅 -3 お土産
Mimi 2017.05.23
モスクワ空港で、JALの直行便に乗って日本に帰ろうとしていた時のこと、押し出しの良い日本人の紳士が私たちのグループのところにやって来た。見るからにジェントルマンのその紳士は添乗員さんとも親しくお話しているようだ。なんとその紳士こそ日本航空のモスクワ支店長だった。彼は私たちツアーのメンバーに、ロシアを旅したことに対して感謝の辞を述べ、これを機会に何度もロシア旅行をして欲しいこと、友人たちにもロシアの素晴らしさを広めて欲しい旨のスピーチをした。
これまで航空会社の支店長自らがツアーのメンバーに挨拶してくれたことなんてなかったので、ちょっと感激だった。それだけ、まだロシア旅行は一般的ではないのだろう。支店長さん、わたし、おっしゃったとおりロシアの宣伝をしていますよ。わたしの周りでも、数人が、近々のロシア旅行を計画している。
ロシア旅行は、ヨーロッパやアメリカ、オセアニアなどに行き飽きてしまった人たちが次に向かう所のようだ。ただ、私たちが日本人としてのアイデンティティを相手に受け入れて貰うのを当然と思っているほどには、相手側に受け入れ準備がないことは覚悟しよう。
成田空港で添乗員さんに、ロシアで使うルーブルは日本にいるうちに両替するようにと言われた。ロシアで日本円からの両替が難しいのだという。クレジットカードも詐欺被害に遭う場合があるから、なるべく使わないようにと言われた。彼女の前回のツアーでは、2人のメンバーがカードの被害に遭ったが、それはサンクト・ペテルブルクの空港だったとか。
そんなことを言われても、一体どんなものが欲しくなるのか見当もつかないし、ルーブルを残して帰ると、日本では紙屑のようにしかならない。そんなことを考えて、成田空港で、必要最小限の両替しかしなかった。 もとから、たくさんお土産を買って配りまくるようなことはしない主義だ。ただ、欲しいものが見つかったのにお金がないからと諦めるのは、悔いを残す。だが、一流ホテルに泊まるのだから、そこで両替できるだろうし、安心な店ならカードで買い物もできるだろう、両替マシーンもあるだろう、と考えた。その考えがいかにナマッチョロイものかは、ロシアに着いてから初めて実感した。確かにエルミタージュ美術館の売店とか、教会付属の売店、大きなお土産店などではカードで買い物が出来た。
だが、ベスト・ウェスタン・ホテルの売店で、良い形の漆器を見つけ、それを12個揃いで買おうとしてカードを使おうとしたら、現金のみと言われる。そこで、数メートル先のホテルの両替所に行ってルーブルに替えようとしたら、両替できるのは、ドル、ユーロ、中国の元のみ。ところが私は日本円しか持っていない。そこで、両替所の隣に設置してある、現金引き出し機に行くと、それが故障している。私は、漆器を、揃いどころか2個買うので我慢しなければならなかった。
帰りの空港の売店に期待を託したが、そこでさえ、カードが使えず、ルーブルしか受け付けない店もあるのだ。 そんなわけで、今回のロシア旅行でのお土産はちょこっとしかない。(お蔭で家に帰ってから置き場所に困ることもなかった。私ときたら、海外旅行で、買い物したものを入れるため現地でスーツケースをもう一個買うなんてことがよくあるのだ。)
ロシアというと琥珀が有名だが、持っているし、マトリョーシカもお土産にいただいたものが既にある。買いたいものは元からなかった。 これからご紹介するのは、私が買った数少ないお土産のいくつかである。
マトリョーシカ まずは、マトリョーシカ。実はこのマトリョーシカは、絵付け体験で描いた自作。セルギエフ・ポサートというモスクワから70キロほどのロシアの聖地は、修道院が世界遺産にもなっている。その近くにマトリョーシカ工房があり、目の前で木を削って、マトリョーシカを作って見せてくれる。電動モーターの回転軸に菩提樹の木片を取り付け、ノミを当てると、見事な正確さでみるみるマトリョーシカのコロンとした形が出来上がる。中を削って出来上がり。マトリョーシカは入れ子になっているので、次々と小さいものを作っていくと、最終的には高さ4ミリくらいのマトリョーシカが出来る。観光客たちは、わぁ、かわいいを連発する。
そんな職人芸に感嘆した後に、ポスターカラーがおいてある部屋に行き、思い思いの絵付けをするのだ。 マトリョーシカの顔は、息子のお嫁さんのにした。彼女はくるっとした目をしているので、ちょうどいい。服にはセルギエフ・ポサートで見た教会の尖塔を記念に描いた。 実はセルギエフ・ポサートの修道院の売店で、もう一つ小さなマトリョーシカを買った。これは、天使の形をしていて、開くと中に金色の卵が入っている。家に帰ってからは、今までお土産でもらった他のマトリョーシカと一緒に飾ってある。 一緒のツアーのメンバーには、ホテルで「作家物」のマトリョーシカを買った人がいた。 マトリョーシカ作家がいて、その作品が高く売られているなんて想像もしなかったが、確かに量産品とは違う魅力がある。 また、私は買わなかったが、サンクト・ペテルブルクやモスクワのスターバックスの店では、マトリョーシカのタンブラーを売っていて、「ご当地限定商品」の為人気らしい。持ち帰ったタンブラーをアマゾンで販売している人もいて、中には一個6000円もの値がついているのもある。
漆器
日本でロシアの美術館展などをやると、ミュジアム・ショップに漆器が売られていることがある。素敵だな、と思いながらも、好きな形の物にお目にかかったことがなかった。ロシアに行くと、色も形も柄も本当に千差万別にいろいろなのがあって、選ぶのが難しいほどだ。 帰国後、すぐ白いご飯を盛ってみたが、特有のニスの匂いがご飯に移ってしまい、食べられなかった。匂いが抜けるまでしばらく待ってから使おうと思う。 ガラス器
ロマノフ王朝の印は、双頭の鷲である。ロシア帝国の国章もそこから来ている。そこで、いろいろなところに、その印章をサンドブラストしてあるガラス製品が売られている。私もサンドブラストを趣味にしているので、ひとつ記念に買った。 ペンダントヘッド
ロシアと言えば、ファベルジェの卵。勿論ホンモノは美術館にあるが、お土産用に金を多用した細かい細工の卵を開くと、中にサプライズが入っているものが売っている。置物の卵にも大小さまざまあるが、私は小さなペンダントヘッドを買った。下のはエルミタージュ美術館のミュジアムショップを見つけたもの。他のお土産物屋さんでも似たようなものを見つけたが、エルミタージュのが一番精巧で美しいと思った。 おもちゃ
お盆の上に鶏が載っていて、お盆を揺らすと鶏がせわしなく地面をつつく様子が再現される。単純だが何か素朴でかわいい。同行の百合子さんも私に一つ買ってくれたので、二個になった。 チョコレート
マトリョーシカみたいな顔をした女の子の絵がついているチョコレートが人気らしい。どのお店でも見かける。 この程度のささやかなお土産品を買っただけなのに、最終日の前に私の手持ちのルーブルは底をついた。最終日にはクレムリンの赤の広場に行き、そこでグム百貨店の日程が組まれている。でも、国営のグム百貨店ならクレジット・カードも使えるだろうし、とたかをくくっていたのだ。
ところが・・・。グム百貨店にはおいしいアイスクリームのスタンドがあって、それをなめながらウィンドー・ショッピングするのがトレンドらしい。また、赤の広場にある聖ワシリー寺院の中の観光はツアーに組まれていないので、自分で入場料を払って中に入らなければならない。当然クレジット・カードは使えない。
結局、同じツアーの人に日本円との両替を頼んでみた。彼女は、成田でルーブルをたくさん両替してしまったらしい。ルーブルが余っていて、こんなにルーブルを持っていても仕方ないからさしあげるわ、とくださった。本当に有難い。 お蔭様でグム百貨店でアイスを食べ、聖ワシリー寺院の中の素晴らしい内部も見ることが出来た。 ロシアはもう一度行ってみたい国だ。「チェホフの足跡を訪ねて」なんていう命題を作って、シベリアなども訪れてみたい。ツアーでなくて、自由に旅するのだ。そのためには、ロシア語が必須。昔からロシアに興味があって、NHKのロシア語講座のテキストやCDも揃えてあるのに、なかなか手が付けられない。最初の頃のロシア語の文字を読むあたりですぐさま挫折してしまう。本当はこの旅行に出かける前に基本的なところは出来ているはずだったのに・・・。
トルコ語やギリシャ語も行く前に文字は完璧に読めるようになったものの、意味がわからないので現地では役に立たなかった。語学はやるとなったら、単語を覚えたり文法を押さえたりしなければ使い物にならない。
せっかくのロシア語講座のテキスト。この旅行で得たモチベーションを糧に、勉強に挑戦してみようかな。そうすれば、お金で買えないようなすてきな体験がお土産として残る気がする。