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第56回スーパーボウル

Shirotaromaru 2022.03.23

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米国四大スポーツのうち最大規模を誇るアメリカンフットボールリーグのNFL。その頂点を決めるスーパーボウルはフットボール最高峰の試合と呼ばれ、毎年大きな話題を呼んでいる。2022年2月14日に開催された第56回スーパーボウルについて、実際に観戦してみた感想などをお届けしたいと思う。

■スーパーボウルとは

NFLは現在32チームから編成されている。アメリカン・フットボール・カンファレンス(AFC)とナショナル・フットボール・カンファレンス(NFC)の2つに分かれ、それぞれに16チームが所属している。そこから更に4チームずつ東西南北の4地区に細分され、レギュラーシーズンの上位チームがプレイオフに進出し、そこで勝ち上がった1チーム同士が各カンファレンスの代表としてスーパーボウルで戦うこととなる。

応援しているチームがスーパーボウルに進出することも難しければ、チケット代含めた観戦にかかる費用も高額なため米国のフットボールファンにとって「自分の愛するチームのスーパーボウルの試合を観に行くこと」はまさに大きな夢なのである。


(筆者撮影:SoFi stadiumにて)

■観戦費用の高騰

スーパーボウルのチケット代は年々上昇する傾向にある。米Bloomberg社によると、今年の平均チケット代は7,542米ドル(約87万円)と報告されており、昨年の平均約7,000ドルよりも500ドル程度の値上がりとなった。高騰する理由としては、定価で販売するチケット数が大幅に少ないことが最も大きい。またスーパーボウルに出場するチームが決まらないうちに転売屋によりチケットが買い占められ、出場チーム決定後に各チームのファンに更に高額でリセールする動きがあるためとも言われている。(※米国ではチケットの二次流通は認められており、マーケットも充実している)

今回は開催日に近づくにつれてチケット価格は下落していったが、特に人気の高いチームや富裕層ファンの多いチームの出場となると、値下がりの可能性はかなり低くなる。また価格が上昇するのはチケット代だけではない。開催地行きの航空券、開催地のホテル代やレンタカー、駐車場なども同時に価格が大幅に上昇する。筆者の見ていた限りでは、通常価格の3~5倍ほどの価格となっており、まさにダイナミック・プライシングの極みという状況を目にすることとなった。

特に駐車場のひっ迫は深刻だった。Uberを利用して試合会場に向かう途中に、自宅周りを貸し駐車場として200~300米ドルで提供しているスタジアム近隣住民の姿を何度も目撃した。インターネットサイトでは5,000米ドルで競売にかけられている駐車場もあったようだ。

■LA空港はセレブのプライベートジェットで大混雑

今回の対戦カードは地元LAラムズとオハイオ州シンシナティ・ベンガルズ。LAにあるSoFiスタジアムで開催され、昨年に引き続きスーパーボウル開催地のチームはスーパーボウルに出場できないという「スーパーボウルの呪い」が再び破られることとなった。

観戦のために全米から大勢のファンが終結するゲームだ。第56回スーパーボウルでは、スタジアム内でのマスクの着用やワクチン接種証明などが求められたものの、入場者数の制限はなく観客数は7万人を超えた。 もともと利用者の多いLAX空港だが、空港内もタクシー乗り場もかなりの賑わいだった。プライベートジェットで観戦にやって来るハリウッドスターや有名歌手などのセレブリティも多く、空港の一角が彼らの機体で大混雑している様子を地元TV番組が取り上げていた。

■スーパーボウルの見どころ


(筆者撮影:SoFi stadium内)

スーパーボウルの一番の見どころはやはり試合そのものだ。 LAラムズは3年ぶり5度目のスーパーボウル出場であり、対するシンシナティ・ベンガルズは1989年から3度目、33年ぶりの出場で悲願の初勝利を目指していた。ラムズにはスター選手が数多く在籍するが、その中でも司令塔のQBマシュー・スタフォードは、ラムズが所有していた有利なドラフト指名権をいくつか差し出してまでデトロイト・ライオンズから獲得した注目のベテラン選手だ。

また、ベンガルズのQBジョー・バロウもカレッジ最優秀選手に贈られるハイズマン賞を獲得し、ドラフト全体1位でベンガルズに入団するも初年度に大きな負傷をして再起が危ぶまれた。そこから見事カムバックを果たした上に、長年不調だったチームをスーパーボウルに導いたというドラマがあったのだ。 地元のラムズに引けを取らないベンガルズファンの大声援もあってか途中までリードしていたベンガルズだったが、最終第4クオーターの残り6分からの逆転によりラムズが20-23の僅差で勝利を収めた。

試合前半終了後に行われるハーフタイム・ショーもスーパーボウルの見どころの1つだ。試合には興味がないがハーフタイム・ショーだけは見たいという人々もいるくらい、毎年多くの人が楽しむ人気ステージだ。第56回スーパーボウルでは、スヌープ・ドッグやエミネムをはじめヒップホップ界の大御所がずらりと揃うという、なんとも贅沢な15分となった。きらびやかでゴージャスなステージに会場は大いに沸き、ファンの歓声は止むことがない。中でもエミネムが、元サンフランシスコ・フォーティナイナーズのコリン・キャパニックがアフリカ系アメリカ人への警察官の暴力に抗議して国歌斉唱の際に行った片膝をつくポーズでパフォーマンスを終えたことも大きな話題となった。

■スーパーボウル史上最高の視聴率

NFL Japan社は第56回スーパーボウルの総視聴者数は推定2億800万人以上と報じた。米国の情報・調査会社であるニールセンによると、米国人口の約3分の2がこの試合を視聴したことに該当するという。また、第56回スーパーボウル開催中にテレビを利用していた人の約90%がこの試合を視聴していたとも言われ、スーパーボウル史上最も高い視聴占拠率(89.6%)だったという結果も報告された。

スーパーボウルで史上最多の7度の勝利を誇り「G.O.A.T=the Greatest Of All Time」と呼ばれるタンパベイ・バッカニアーズのトム・ブレイディ、そしてピッツバーグ・スティーラーズを18年間率いたベン・ロスリスバーガーは共に今シーズンでの引退を発表した。しかし先日、ブレイディは自身のSNSで引退を撤回すると表明し、アメフト界にまたもや大きな驚きを与えた。

2022-2023年シーズンも面白い試合が期待できそうだ。9月のシーズン開幕が楽しみで仕方がない。
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