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茶道で心潤う日々~伝統文化に触れる贅沢なひととき

 2021.02.28

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茶の世界でもっとも私を魅了するものはなんでしょうか。

それは「自由」であること。

と言うと、驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。

茶道と聞けば「敷居が高い」「堅苦しい」「作法が厳しい」と言うのが、一般的な印象かと思います。茶道をはじめたばかりの十数年前の私も、同様に考えていました。

『道』と名の付く通り、当然のことながらそう言った厳しい側面もたくさんあります。
しかし伝統文化として継承されてきた茶道の世界に身を置くと、果てしない未来を感じられるのです。

少し心軽やかに「茶道」への扉をノックしてみませんか?

美しい所作、磨かれてゆく感性、呼吸が整いからだの内側からキレイになってゆくのを感じられる世界へ。

茶道は伝統と革新の世界


伝統文化と聞けば、どこか入りにくさと窮屈さを感じられることでしょう。

もちろん私もそうでした。

実際は自分自身の心の軸を定め、自らの道を切り開いてゆく革新的な世界です。

茶道をはじめたきっかけ

幼いころから「日本を感じるもの」に心惹かれていたものの、茶道にきちんと足を踏み入れたのは20代後半のこと。

実は『礼儀作法を学びたい』という気持ちが、茶道をはじめたいちばんの理由です。

大人になると「こんなことも知らないの?」と恥ずかしくなる場面もしばしば……とは言え礼儀作法を習う機会は、なかなか得られるものではありません。

書籍やマナー教室などで聞きかじりをするものの、どこか「本質的なもの」が抜け落ちているように感じたのも事実。あれこれ悩んだ先にあったのが「茶道」でした。

美しい所作と呼吸

抹茶は「淹れる」ではなく「点てる(たてる)」と表現します。お客様へ茶を点て、差し上げる一連の流れを点前(てまえ)と言い、数えきれないほどの手順が存在しています。

覚えるだけで精一杯なのに、稽古の度に習うことが変わるという恐ろしさ。当然一度ではまったく習得できず、震える手でとにかく「稽古を終わらせること」ばかりを考える始末。礼儀作法を学びたいと覚悟を決めてはいたものの、心は折れる日々でした。

しかし、ある時突然、無意識にからだが動くようになったのです。

先人が磨き抜き、常に研鑽を重ねて継承されてきた「型」を無心に繰り返すことで、知らぬ間にからだが美しい挙措(きょそ:立ち居ふるまいのこと)を覚えていきました。

からだが動くようになると、不思議と呼吸が深まり、心が穏やかになります。禅の心とも深く関わりのある茶道は精神性を高める良い機会。マインドのセルフコントロールができるようになり、忙しい日常でイライラに悩まされる方にもオススメです。

ミニマリズムの先駆け

茶道と言えば、千利休を思い浮かべる方も多いでしょう。

現代に続く「侘茶」による茶道を大成した大傑物です。織田信長・豊臣秀吉をはじめとした戦国時代の名だたる武将に茶道を指南し、それまでの華やかな茶の世界を独自の感性で変化させました。

簡素な美しさを追求し、現在で言うところの「ミニマリズム」を体現していたように思います。情報にあふれる現代社会、ミニマリズムが多くの方に必要とされはじめてからしばらく経ちますが、今一度、自身にとって必要なものを見つめ直すことが大切な時代。

茶道の精神が、その手助けとなってくれることは間違いありません。

暦で暮らす豊かさ


茶道は「旧暦」が息づく世界です。

自然が導いてくれるリズムは、健康的な暮らしを支えてくれます。

茶道を通して知ることができたのは、自然に寄り添う暮らしの豊かさでした。

旧暦とは?

現行のひとつ前の暦のことを指しており、日本においては明治初期の改暦まで使用されていた「太陰太陽暦・天保歴」がそれに当たります。

私は10年ほど前から、月の満ち欠け・太陽の動きをもとにした「旧暦」を意識した生活を送るようになりました。

新月から次の新月までをひと月として数える旧暦は、新暦とおよそ1か月の差が生まれるため、はじめはタイムラグにとまどい、頭で理解するまでに時間がかかります。

そのうちに、なにげなくスケジュールを管理する新暦とは別の物として捉えられるようになります。今では、自然が授けてくれる恩恵にあずかる手段として「感覚」で認識しています。

茶道における旧暦

旧暦に沿って「しつらい」を整えることが多い茶会・茶事。

もてなす側である亭主は、道具・菓子・装飾に季節の行事や四季折々の風情を生かして、あれこれともてなしの心を尽くします。

新暦よりひと月ほど遅れる旧暦は、慣れるまでは少し違和感がありますが、本来の自然の景色を思い浮かべた時、よりからだの感覚に沿っていることに気づかされます。

季節の移ろいを感じる心

日本には5節句と呼ばれる、季節の節目の行事があります。

• 人日(じんじつ):1月7日 
• 上巳(じょうし):3月3日
• 端午(たんご):5月5日
• 七夕(たなばた・しちせき):7月7日
• 重陽(ちょうよう):9月9日

古来、縁起がよいとされる「奇数」の重なる日に季節ごとの行事があります。茶道でもこのような節句行事の他、季節の移り変わりを意識した茶会が行われます。

自然や季節の変化と切り離すことができない世界。

普段は深く意識せず、寒い・暑いといった感覚のみに翻弄されてしまいがちですが、茶道に触れることで季節の移ろいを身近に感じられるようになれます。

伝統に育まれる上質な感性


高価な道具を自慢し合う。テレビや映画で描かれるそのような姿をイメージされる方もいらっしゃるかもしれません。

茶道のはじまりである戦国時代においても「蒐集家の集い」という側面もありました。

しかし「みたて」と呼ばれる代用品でも成立し、それを粋と捉える感性があるのも面白いものです。

茶道の道具とはなにか

茶は次の4つの道具・材料があれば点てることができます。

湯・茶わん・抹茶・茶せん

「茶せん」以外は、専門の道具はなくても、日常品で代用出来てしまうのです。

それでも1つ1つの道具に、何万・何十万・何百万もの価値が生まれるのも茶道界の妙。
戦国の昔、茶道具に一国と同様の価値を与え褒賞とすることで、土地の切り売りをせずとも済むようにした、という話もあります。

楽しみ方は人それぞれ。

「貴重な」道具を目にし、手に取ることも喜びのひとつかもしれません。

自然の豊かさが土壌

想像を越えたスピードで進化を続ける現代社会。「10年ひと昔」どころか、たった半年で世の中が変わってしまうことですら起こり得ます。

そんな人間をよそに、自然は泰然と構えているものです。

温暖化や異常気象・災害など、これまでとは違う変化も否めませんが、自然界の流れは人のそれに比べてゆっくりと丁寧に進んでいるのではないでしょうか。

自然の恩恵を受ける茶道においては、忙しく動き続ける「心・頭・からだ」を優しく労わり、クリアにしてくれる豊かなひとときを味わえます。

上質な暮らしの本質を知る

静かな時間、穏やかな空気、心の目でみる空間の広がり。

茶道には「上質な暮らし」の本質が詰まっています。高価な家具や車、高級レストランやブランドバッグ、もちろん心を満たしてくれるアイテムには違いありません。

それにも勝る心の平穏、健やかなからだや感性、そういったものの価値を見出すことができるのが茶道の魅力です。

「茶道で心潤う日々~伝統文化に触れる贅沢なひととき」のまとめ


伝統的な世界には、決められた規則や窮屈な側面が存在します。

しかしそこには先人が積み重ね、削ぎ落とし、継承してきた「型」があります。まずはその型を自らの中に落とし込み、繰り返すことで、自分自身で新たな道を切り開いて行くことが出来ます。

歴史があるだけに責任も伴いますが、しなやかな強さを育む喜びを感じられる茶道の魅力をぜひ味わっていただきたい。

そう感じる今日この頃です。

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