

身近な中国商人
NOVA ERA 2025.04.21

私は営業をしていたことがある。以前、2か月ほどアルバイトをしていた営業所のチーム長と何故かLINEがつながっていて、そこから再度アルバイトをしないかと誘われたのだ。1年ほどの長期アルバイトになるので、打ち合わせを兼ねて中華料理店でランチをご一緒した。
チーム長は、中国人である。しかも、かなり営業成績が良い。日本の全ての会社、その職種でトップ100人にはいっている。中国商人なんだろう。
「営業所のスタッフの言うことは聞くな。」 それが第一声だった。
「皆、副業をしているよ。営業の仕事は先ざき、どうなるかわからないからね。」
まるで、映画のようだった。お店に中国語が飛び交っている。日本語が聞こえない。赤いランタンがエアコンの風に揺れている。
日本人がこんなことを最初に言うだろうか?でも、それは真実なのである。営業所のスタッフは、会社の利益、自分たちの立場が最優先で、営業職員は二番目である。
そして、チーム長は急にドイツの健康飲料の素を取り出し、私に買うように強力に勧める。チーム長のサイドビジネスなのだろう。チーム長が、コップの水にピンク色の粉末をいれ、くるくるかき混ぜている。「これはみんな飲んでるよ。体質が改善される。飲まないとなんだか調子が悪くなる。」くるくると回っているピンク色の健康飲料を見ながら、私は黙っていた。
私の知人で、中国出身で60年前に日本に帰化した中国人がいる。かなり顔が広いようだ。チームに中国の同じ省出身の営業がいたので紹介していいかどうか、私はチーム長に訊ねた。
「どうして他人に客を回す。全て持って行かれるよ。自分の客にするんだ。」
チーム長は、一息おいて、
「それが営業というものだ。」
さすが、世界三大商人の一角である。営業に哲学がある。どこの国の商人にも哲学はあるだろうし、日本にも経営者哲学の本は沢山ある。しかし、ここまで行動につながっているだろうか?
私は、海外でユダヤ系アメリカ人の女性とルームシェアしていたことがある。ユダヤ人の合理性、$の使い方を知っている、を見たことはあるが、今回、中国人が生まれながらの商人であることを確認した。メディアを通してしか得ていなかった知識を、身近な人から経験で得た。
本当に、時代は転換期にきている。日本人が英語のように中国語を、仕事のために習得しなければならない日がくるかもしれない。