新店舗計画
~新型ベーカリーへの挑戦~

YOU 2019.02.25
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 私の家では、物心がついたころから朝食は決まって町のベーカリーで購入した「パン」が並んでいた。どれだけ記憶をたどっても、日本の朝食の定番であるお味噌汁やたまご焼き、ほかほかの白いご飯に焼鮭が食卓に並んだことはない。

  この部分だけ話すと、なんだか“かわいそうな子ども時代”を過ごしてきたように思われてしまいそうだが、決してそんなことはない。どうやら、幼い頃に食の細かった私は、せっかくの手料理(朝食)をまったく食べなかったらしい。

  それを聞かされ「自分のせいだったんだな・・・」と納得したい部分ではあったが、そうは言いつつ無類のパン好きである母。そして、共働きで忙しい母にとっては、購入したパンがあることで朝に少しの時間的余裕が生まれる。何より「母本人がパン好きなのだから仕方がないか・・・」となかば諦めたのをはっきりと覚えている。

  結局のところ、大学進学と同時に親元を離れるその日まで、我が家では“毎日パン尽くし”の生活は続いた。台所のテーブルには、地元のベーカリーで買ってきたおいしそうなパンが常に並んでいた。それが当たり前の光景だった。

  あまりに幼い頃からパンばかりを食べてきたせいか、大学に進学してからはまったく食べなくなった。母と同じようにパン好きになってもおかしくないところだが、当時は完全に飽きてしまっていたのだ。

  しかし、20代も後半にさしかかり、私の中で突如初めての“パンブーム”が巻き起こった。母と同じように、今の妻、つまり当時の彼女が大のパン好きだったことがきっかけだ。



  もう何年もベーカリーには行ったこともなかったが、カレーパンや明太子フランスパン、コロッケパンといった、所謂おかず系のパンが大好きなことに気がついた。一方で、妻はメロンパンやあんぱん、クリームパンといった甘いものばかり。こうも好みが違うものかと少し驚かされた一面だった。

  「大人になると、子供の頃に食べられなかったものが急に食べられるようになる」といった話はよく聞くが、私の場合はきっとこれがその一つなのだろう。 そんなパンブームをきっかけに母と同じように結局私も無類のパン好きになってしまった。

  今は、複数の飲食店やサロンを経営し、軌道に乗ってきたところ。そんな中、新事業として何か新しいジャンルで挑戦していと思ったところで次の候補としてあがったのが「パン屋さん」だった。というのも、ただ私がパンが好きだからという理由だけではない。いつものように、さまざまな店を利用する中で「この点を改善すればもっと上手くいく」といった確信ももちろんある。そして、幼い頃から食べていたものであり、母を助けてくれた存在でもある。そんな視点からも試してみたくなったのだ。

  都内の有名店で働くパン職人の友人を店長に起用することとなり、あとは土地や店舗をどうするかというところだ。

  そこで私がまず始めたのは土地探し。都内ではなく、開店するのは他県のため該当地域の不動産や住宅メーカーをひたすら巡ることからスタート。他県となると、やはり駅周辺以外は必ず車が必須となる。それは即ち、駐車場スペースも確保しなければならない。

  100坪以上の土地を目安に探し出すも、なかなか好立地には空きがない。学校や公園、スーパーや住宅地。あらゆる視点に立って、人の流れやターゲットを考えていけねばならない。そんなところがまたおもしろい。

  少し気になる空き地であれば、駅から自らの足でそこまで歩いてみる。その周辺を何周も時間をかけて回ってみる。その土地の雰囲気や人通りなど、自らの目や感覚で感じることを大切にしている。

  この方法は、以前お世話になった経営者から学んだ部分でもある。地図や数字だけで確認しても何も見えてこない。やはり、そんな部分はいつまでもアナログな人間でありたいと思うのだ。

  土地勘が無いエリアであれば、地元の方からのお話も伺いながらいくつか候補をあげ、構想を練っていく。この部分に関しては、現在も複数の担当者と情報交換を行いながら、現在も模索中である。

  また、そのような中で今同様に時間を割いているのが、町の至る所にあるパン屋巡りである。やはり、人気のあるお店では、それぞれが持つ特徴や長所がある。しかし、その中でも今までの私の経験やかけられる費用を駆使することで、もっと改善できる部分があることに気づかされるのだ。



  例えば、インターネットで検索すればすぐに出てくる人気店のA店。ここは、自宅の1階がパン屋になっている。人気の秘密は、もちろんインターネットの検索上位に出てくることも大きいだろうが、私が思うにその立地である。県内では有名な大学が目の前にあり、交通量の多い道路に上手く面している。また、駅からも徒歩10分ほどと好立地で、歩いて訪れる学生や家族連れが多く利用している。それだけでなく、ランチもおいしく、ママ友達や若い女性の人気スポットとなっていた。

  都内では当たり前にあるような店でも、やはり地方にはこのようなパン屋はそれほど多くない。どこの地域でも、お洒落で気軽に話せる空間は人気が高いのだろう。

  見た目も女性に好まれそうな可愛らしいパンが多く、チーズケーキやシュークリームといったケーキ類も多く販売されていた。ただやはり、このようなパン屋の典型だが、1つあたりの値段が高すぎる。3つ購入すれば700円近くになってしまう。

  今のご時世、コンビニでパンを3つ買ったとしても、せいぜい400円くらいだろう。このような点は、私の店ではぜひ参考にし、改善したい点である。

  また、もうひとつ取り組みたい点として、友人として招く店長の働き方の見直しがある。パン屋といえば、朝早くから仕込みがはじまり、1日中焼き続けるスタイルが一般的だろう。しかし、良い物を提供するには、ある程度そこで働く友人にも自由な時間が必要だと私は考える。

  だから、私の店ではあえて品数を制限したり、さまざまなIT技術を駆使したりして、唯一無二の「新型ベーカリー」を作りたい。そして、そこで働く従業員の時間的な拘束をなくし、いつまでも自由なパン屋でありたいと思う。

  今では、一番楽しみにしている母。オープンと同時に、一番に食べてもらえたらと思っている。



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