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経験は宝なり

YOU 2019.02.25

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 世の中の人々は何を求めているのか?もっと貢献するためにはどうすればいいのか?私にしかできないことは何か?・・・

  このように、日々さまざまな迷いや葛藤が頭の中を駆け巡っているのだが、そんな中で私を助けてくれるかけがえのない経験、それは新卒採用で入社した営業時代の経験だ。それが、今、大いに役立っている。

  今の立場になる前は、私は誰もが知る大手企業で営業職に従事していた。その頃、私の売っていた商品は今では珍しい個人宅への訪問スタイル。所謂、100%飛び込み営業だ。

  元々人見知りの性格の私は、普段はほとんど自分から他者に話しかけることはない。それは今でもあまり変わらないのだが、若く経験値の浅い当時は営業部の配属が決まった瞬間、「自分になどできるのだろうか・・・」と強烈な不安にかられたものだ。学生起業もアルバイト経験もあったが、不安なものや苦手なものはしょうがない・・・。

  だがしかし、結局そんな心配は1ミリも必要がなかった。結論から言えば、入社半年であっという間に契約者数は全国トップクラスにまで昇りつめることができたのだ。自分でも驚いたが、私の中には今まで気づくことのなかった“営業スイッチ”が存在したのだ。

  このスイッチが入ると、人見知りの自分は微塵も出てこない。どんな相手だろうが、それが初対面だろうが、寒かろうがとびっきりの笑顔と愛嬌を振りまける。

  では何故このスイッチを発見できたのか?答えは実にシンプルである。「とりあえずつべこべ言わず、我武者羅にやってみたから」である。(今までの私であれば、もう少し時間をかけたり、周りに相談するなりしていたはずなのに。)

  この考えに至った経緯には、遡ること数年前、高校時代の1つの経験が関係している。

  私は強豪校の部活動で、一度大きな壁を乗り越えられなかったことがあった。つまり、“挫折”したのだ。監督が私のさらなる成長に期待し、大きな課題を突き付ける。強豪校ではよくあるお決まりのやつだ。

  しかし、学生時代の私は、若かったせいか懸命に闘える部分と、一方で少し冷めた部分が混在していた。時々現れる器の小さな捻くれ者の性格が邪魔をする。

  素直になれない。だから、そのときは監督の意図に気がづいていながらも、その課題に挑もうとしない自分がいたのだ。

  大坂なおみ選手のように、試合中に「もう、無理・・・」と心を閉ざし泣いてしまう気持ちは痛いほど分かる。大坂選手の場合は、やはり私なんかとは持っているものが全く違うので、それを乗り越え今では世界一のトップ選手になっているのだが・・・

  挑戦をやめれば成長はない。チャンスもない。今となっては当たり前に分かることも、そのときはなかなかわからなかった。そのたった一度の経験を達成感で溢れるものにもできたのに。自分自身で掴むことを諦めた、唯一の悔しい経験となった。

  そして、就職し最初に立ちはだかった大きな課題と逃げたい気持ち。それが押し寄せて来た瞬間にふとそんな過去の経験が頭を過ったのだ。

  「今回はやるだけやってみよう」

  つまり、”やらず後悔するならやって後悔。つべこべ言わず、我武者羅にやってみる。” そこにつながったのだ。

  そして、徹底的に“自分がお客さんだったらどう接客されたいか?”という視点で考えた。そして瞬時に、柔軟に行動する。意外とこの部分は簡単そうで、誰しもができそうなことでなかなかできない。

  なぜなら、そこには”早くノルマを達成して楽になりたい“”営業テクニックを習得して簡単に落としたい”そんな想いがあるからだ。

  ほとんどの営業マンがそう抱くことは当然といえば当然だが、その欲が先行してしまい客観的にどう映るかということが見えなくなってしまう人が非常に多い。

  このような考えでは、もちろん相手の本心やニーズを引き出すことはできないし、こちらの欲望が会話や態度から幾度となく垣間見えてなんだかいやらしい。しかも、それを相手が感じていることさえ気がつかなくなっていく負の連鎖に陥ってしまう。

  私自身も何度もそんな失敗を繰り返しながら、自分にあったスタイルを確立していった。入社すると、先輩や上司から営業テクニックを伝授してもらい、まずは真似をするのが一般的だろう。しかし、皆が当たり前にやっていた営業方法を、私は一度もやらなかった。

  今思えば少しヤバい奴だったに違いないが、そんなことは置いておこう。きっとそれが良かったのだろうと今でも自信をもって言えるからだ。私にとっては、そこに“自分がお客さんだったらどう接客されたいか?”という目線さえあれば、従来の方法などは必要なかったからである。

  また、もうこの時期に1つ心の内にあった考えと言えば、「新人」と呼べるのはせいぜい入社から2、3年まで。その期間こそ、“ゴールデンタイム”だということだ。

  5年目で結果が出せるようになるのは当然のこと。ならば、1年目から5年目、いやそれ以上の成果を出せたとき、“新人なのに・・・”というプラスアルファの付加価値が絶対についてくる。後から必ず大きなチャンスや成果となって返ってくる。しかも、これは誰しも平等に得られるチャンスなのである。

  それに気がつけば、その特別な3年間を死に物狂いで行動すること以外ありえない。結果的に待っていたのは予想以上のものだったし、経験、人脈、思考、資産など、さまざまな面において今でも大きく影響している。

  だから、“つべこべ言わず、我武者羅にやってみる”がやっぱり私にとっては大正解だったのだ。

  高校時代の苦い経験に、“ゴールデンタイム”の存在。この2つがあったからこそ、固定概念をぶち壊し営業時代の良いスタートを切ることができた。そして、その壁を乗り越えたことで、すばらしい経験値となって今の私の原動力となっている。

  よく、経営者は“人生良い人が損をする。” ”正義とは何か?“と迷うことがある。カメとウサギの童話と同じで、どれだけノロマでも、確実に一歩一歩丁寧に積み重ねられる人がやっぱり強い。どんな環境でも、どんな立場になってもそんな人間であり続けたいと強く思う。



cover photo:pavel ahmed  Summer Wild Beach-Typhoon at White sea-panorama (Black and White)

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