東京五美大卒展に行く

Mimi 2018.03.26
  3月初め、友人たちと誘い合って国立新美術館に五美大卒展を見に行った。展覧会の正式名称は、「東京五美術大学連合卒業・修了制作展」である。五美大とはすなわち、多摩美術大学、女子美術大学、東京造形大学、日本大学芸術学部、武蔵野美術大学である。

  それぞれの大学に足を運ぶとなるとかなり大変だが、国立新美術館に作品が一同のもとに集められると、それぞれの大学のスクールカラーを比較出来るとともに、現代美術のトレンドのようなものも感じ取れる。それに、日本画、油絵、版画、彫刻とジャンルもいろいろで見ていて楽しい。

  美大を卒業しても、そのまま作家になって作品を作り続ける人は、そんなに多くないかもしれない。だが、卒業後の進路はどうであれ、四年間、あるいはそれ以上の年月、芸術を学んで過ごせたなんて幸せな学生さんたちだ。 

  そんな幸せな学生さんたちが、卒業を迎えて最後に作った作品は、自分の学んだことの集大成を示す気概に満ちている。私と一緒に行った友人たちは、だいたい学生さんたちの母親世代なので、母親的感覚でおしゃべりしながら作品を鑑賞していく。

  たとえば、キャンバスを真っ黒に塗っただけの作品を見ると、「あら、この子のお母さんが見たら悲しがるでしょうね。せっかく学費を出して、キャンバスを黒く塗るだけ?」つい勝手な想像をしてしまう。

  ベニヤ板に穴をあけて、そこにぴったり半分になるように、ピクリともせずポーズしている「作品」を見ると、体が痛くならないかしら、などと心配する。芸術の為には、身を挺して痛みを乗り越えなければいけないのか。



  楽しいのはやはり立体作品だ。今回、期せずして群猫の作品が2つあった。一つは、猫が大名行列をしている姿で、籠やのぼりなども良くできていて、写真を撮る人だかりが出来ていた。



  茶のテラコッタの群猫の作品もあり、いろいろな姿態の猫が、リアリスティックに表現されている。これだけの数の猫を作るに至るまでは、どれだけ観察をしたのだろう。



  多摩美術大学の版画のコーナーに入った時だ。ぱっと目に入った版画にわたしは惹きつけられた。「あかぽっぽ」という題の鳩の版画。素朴な形、美しい色、優しい目。「これ好き!」と心の底から思った。もう、そこで足が止まってしまって、動きたくない気持ち。

  近くに座っている係りの学生さんに、「あの版画の作者さんはここに居ますか?」と聞いたら、「はい」と答えて、すぐ近くの女性のところに連れて行ってくれた。これが、作者の岸田紗英さんとの出会いだ。繊細な雰囲気で、声も細い。こういう作家さんから、おおらかな印象の「あかぽっぽ」が生まれたのだ。「あの版画をもう一枚刷っていただけない?」と交渉。

  その後、メールで他の作品を見せていただいた結果、「あかぽっぽ」の他に「クジャク」も刷って貰うことになった。 

  そして、今日、作者自らが作品を持ってうちに来てくれた。   やっぱり美大の学生さん。白いコートにふかふかのこげ茶のリュック。コスチューム自体が全体的に可愛く、センスに溢れている。

  梱包を取ってくれるように頼むと、丁寧にテープをはがしていく。わくわくする瞬間。



  そして、わあ、作品とご対面。二枚が屏風のように開くように工夫して来てくれた。

  あかぽっぽの、優しい目とご対面。飛ぶクジャクの優美な姿は、スマホの画面で見ていいな、と思った以上の迫力だ。



  国立新美術館の広い空間で見た時よりずっと大きく感じられる。

  ご自分の自宅でバレンを使って刷って来てくれたそうだ。岸田さんは華奢に見えるけれど、こんな大きな作品をバレンで仕上げる体力があるんだ、と感心する。

  実は、五美大展で版画作品を買うのは二度目である。一度目の時に買ったのはうさぎの版画だが、見るたびに「いいな」と思う。若い人にしか表現できない、初々しさを感じるのだ。その作者は、高島屋のバイヤーにも目をかけられ、後に新宿高島屋に作品が並べられた。

  わたしの家には有名な画家たちの作品がいろいろ飾ってあるが、わたしは有名な画家だから買ったのではない。絵を見て惚れ込んで、是非是非欲しいと思って買ったものばかりだ。

  岸田紗英さんの作品は、そういう作品の間にあって遜色ない。この濁りのない純粋な美しさ、かけがえのない優しい心を、これからも作品に込めて欲しいと心から思う。

          
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