

富裕層と中古品
NEWS BLOG 2019.07.03
世界の超富裕層が買い求める超高級品は、すでに誰かの所有品であった物、つまり「中古品」であることが多いものです。たとえば40代にして事業で大成功、超富裕層となったAさんがオークションで手に入れた1950年代のポルシェのビンテージカーは、その製造時に、Aさんはまだこの世に生を受けてすらいません。つまり誕生からAさんの手に渡るまでのあいだには、幾人かのオーナーの手を経てAさんのものとなったことでしょう。
しかし、だからこそAさんは、その車が生きてきた時代の物語とともにその車を手に入れたかったのでしょう。それは「中古品」というネガティブな言葉で表現されるべきものではなくて、「歴史物」や「年代物」などと表現したほうがふさわしいのかもしれませんね。
美術品や宝飾品をはじめ、車や時計などの美的な価値を有する物の世界では、もともと「歴史物」や「年代物」がサザビーズ、クリスティーズなどの国際オークションで取引され、富裕層の熱狂する市場が育まれてきました。
しかし、最近ではアパレルやバッグなどのファッションアイテムも、富裕層が「歴史物」「年代物」とまで行かない中古品を手に入れたり、販売したりする時代になってきたようです。
ラグジュアリーマーケットサイトのCPPーLUXURYが、ボストンコンサルティンググループによる「グローバルコンシューマーのインサイト」について紹介しています。この中で「中古ラグジュアリー市場」としてまとめられているところを以下に訳してみます。
中古ラグジュリー市場
デジタルプラットフォームの隆盛で、日本円で約3000億円となる中古市場は活況を呈し、年間12%の成長が見込まれる。2021年には市場は約4200億円になる勢いだ。ラグジュアリーな消費者は今や他人が一度所有した物を自分が所有することに抵抗がなくなった(60%が「抵抗がない」と回答)。その理由は、1)品質が保証されていること、2)店舗で売り切れた商品が見つかるから 3)限定商品やビンテージ物が買える 4)オンラインのプラットフォームが増え、価格の透明性が高まった、などだ。
中古ラグジュアリー商品で人気があるのはハンドバッグが1位で40%。次に洋服。ただし中国と日本は例外で、レザー小物が人気だ。また中古で買われているブランドのベスト5は、シャネル、ルイ・ヴィトン、グッチ、バーバリー、ディオールの順。とはいえブランドの好き嫌いは地域によって差があり、ヨーロッパ、中国、アメリカでは人気ブランドが異なる。
ラグジュアリー消費者の3分の1が中古市場で物を売ったことがある。理由はワードロープの整理(44%)、そのお金で新しいラグジュアリー商品を買う(21%)、サスティナブルでありたい(17%)など。若い消費者の半数以上が、ラグジュアリー商品を買うときにリセールバリューを考えている。このことからも中古市場の未来は明るいといえる。
富裕層インタビューを行っていて、よく気づくのは、まさにこのポイントで、富裕層は高級品を買うときはリセールバリューをとても気にしています。このパティックの時計、ディスコンになっているし、10年経てば、これくらいには上がってるだろう、とか、このフェラーリ、いま買っておけば4000万円にはすぐなるはず…という算段が瞬時のうちに行われているのです。
これまではそれが高級車や高級時計、美術品、ジュエリーなどの世界にとどまっていました。しかしデジタルプラットフォームが進化して、売りの相場も見える化したことで、それが洋服やバッグなどの、より低価格の世界でも浸透してきているということなのでしょう。洋服やバッグなどでは必ずしも値上がりまで期待するものでは無いかもしれません。
ですが、本来はより消耗品であるはずの洋服やバッグも、買う一方でなく、売ることもできることが、「サスティナブル」であろうとする現代の富裕層に刺さっているのでしょう。今後ますます富裕層にとって中古ラグジュアリー市場の価値は高まっていくと思われます。
cover photo:Janne Hellsten “Brand new second hand”
※写真はイメージです。
参考:CPP-LUXURY
NOBLESTATEを運営するランドスケイプでは210万件の富裕層データベースをもとに、ラグジュアリー消費者のネットワークを通じた富裕層サーベイ、デプスインタビュー調査を行っています。詳しくはこちらからパンフレットをダウンロードください。