Vivianaのファリナータ、Marthe のソッカ(最後にレシピつき)
Mimi 2020.06.24
去年、NHK、BSの「偉人達の健康診断」という番組で、大正天皇の即位記念晩餐会のメニューについてやっていた。
大正天皇の即位晩餐会に招かれた海外からの賓客に供されたのは、きれいな淡水で育ったザリガニ。北海道にしか生息しないそのザリガニを軍隊まで総動員して捕獲したそうだ。日本には伊勢海老などおいしい海老があるにも関わらず、そうまでしてザリガニに拘ったのには理由がある。
離乳期に鰹節出しの入ったエサを食べたマウスと、入っていないのを食べたマウス、大きくなると、カツオ出し入りのエサを食べたマウスは、そちらを選ぶ。つまり、離乳期に食べておいしいと思ったものが将来病みつきになる、とのこと。
上記のマウスと同じに、離乳期(六歳頃)に食べたものが、海外の人には「病みつき」になるほどおいしいと考えられるので、彼らに馴染み深いザリガニを供したのだという。
さて、わたしの離乳期の病みつきは何だろう。六歳頃に祖父に連れて行って貰った「花長」。もぞもぞ逃げようとする海老を目の前で揚げてくれる天ぷらは絶品で、今に至っても同じくらいおいしい天ぷらは食べたことがない気がする。
大人になってからのことだが、南フランスのマルテの夏の台所で食べたsocca(ソッカ)も忘れ難い味だ。マルテの家はカンヌにあるのだが、フレンチ・アルプスに別荘がある。ロックガーデンの一角にはサマー・キッチンとマルテが呼ぶあずま屋がある。その脇の石窯で、夫のアンリが焼いてくれたのがソッカだ。
うちの家族の他、マルテの息子やお嫁さんも加わって囲む賑やかな食卓。白い綿のテーブルクロスの上には、土地の冷えたワインの瓶、カンパイで掲げられる輝くグラスの向こうには緑濃い雄大な連山。アンリの焼き立てのソッカはすぐに切り分けられて各自の皿に。アツアツをふうふうしながら食べる。「お!い!し!い!!!」と本気で思った。
フランスから帰ってからも、あのサマー・キッチンで食べたソッカが忘れられなかったけれど、石窯も我が家にはないし、自分で作れるとは思っていなかった。
ところが、イタリアのヴィヴィアナが送ってくれた料理の写真の中にfarinata(ファリナータ)というお焼きがあった。材料を見ると、ヒヨコマメの粉とオリーブオイル。あれっ、これってソッカの材料と同じじゃない?
わぁ、自分でも作れるんだ!私も作ってみたい!俄然やる気が出てきた。ヴィヴィアナにレシピを訊く。
ヴィヴィアナのファリナータ
ああ、それからは期待、失望、期待、失望の繰り返しだ。レシピ通りのオーブン温度と時間で作ると焦げてしまう。だからと言って、オーブンの温度を下げると、生っぽくなってしまう。
Catastrophe あるいはdisaster としか言えないMimiのファリナータ
マルテは、てんから私が作れるとは思っていないみたいだ。ソッカは外のサマー・キッチンで作る物。石窯の温度を250度にして、イタリア製の直径38センチの特製パンでなければ焼けないという。それでも作り方を伝授してくれた。
ソッカ用のイタリア製型
ヴィヴィアナのファリナータ(直径27cmから30cmの円型用───型にオーブンペーパーを敷いて置く)
材料
- ヒヨコマメの粉 125g
- 水 375ml
- エクストラ・ヴァージンオイル 50ml
- 塩 3-4g
作り方
- 粉と水を混ぜ、最低4時間冷蔵庫に寝かせる。
- 上記を寝かせた後、オリーブオイル30mlと塩を加えて混ぜる。
- 型に20mlのオリーブオイルを入れてから、2を注ぐ。
- オーブンは250度に設定しておく
- 型に入れても中身を良く混ぜ、オーブン下段で10分焼き、その後オーブンの中段で10から15分焼く。(注:ヴィヴィアナのオーブンは電気オーブン)
マルテのソッカ(直径38cmの円型用)
材料
- ヒヨコマメの粉 100g
- 水 200ml
- オリーブオイル 75g
- 塩、こしょう
- ピーナッツオイル 大匙3-4杯
作り方
- ピーナツオイル以外の材料を混ぜ、最低2時間寝かせる。
- 材料を型に入れて焼く前に、型にピーナツオイルを入れて焦げ付かないようにする。
オリーブオイルの量は好みで、しっとりが好きな人は多めに、クリスピーが好きな人は少な目に。
材料はすべてシロップのように混ぜ合わされて、スムーズであることが大事とのことだ。 - 石窯オーブンの温度が適切かどうかは、型に入れた材料にあぶくが出て膨らむかどうかでわかる。10分ほど焼き、ソッカが色づき、平になれば出来上がり。
サマーキッチンの脇に立つ石窯の全貌
燃料は薪
「花長」の天ぷらと共に、私の舌だけが覚えているあこがれの味。せめて、ヴィヴィアナのファリナータをオーブンの加減を工夫してマスターしたいと思うのだが・・・。