ミレニアル富裕層と
オートクチュール

NEWS BLOG 2018.08.24
 これまでミレニアル世代といえば、ファッションにお金を使わないとか、ファッションにお金を使うことを恥ずかしいと思っているというのが一般的な見解でした。ところが最近になって、ファッションの中でも最高位にあるオートクチュ-ルの世界で、ミレニアル世代の存在感がでてきているという記事がVOGUEに出ており、おやっ?と思って読んでみました。

 カンヌやヴェネチアなど世界のセレブリティが集まる映画祭のレッド・カーペットや、限られた人たちが集まるガラ・ディナーやバル(舞踏会)。一般には観客として、あるいは映像の世界でしか、今は見かけなくなったのがオートクチュールのファッションです。

 全盛期の1950年代に、オートクチュールの顧客は全世界に2万人いたといいます。しかし現在は4000人。人数で見るとパイは明らかに小さくなっていますが、かつては1人が5着買っていたのが、今は20着買うなど、現代は1人あたりの購買力が半端でないといいます。

 実は突出した富を有する人は、当時より現代のほうがはるかに多いでしょう。またミレニアル世代は世界に20億人と言われ、絶対数も圧倒的に多い。しかし、当時に比べ、ライフスタイルがカジュアル化し、オートクチュールのドレスを着ていく場も、だんだんなくなってきたことで、必要とする人が減っていることは容易に想像がつきます。

 人数は減っているが、一人あたりの購入金額は増えている。このオートクチュール市場の局所的成長の背景には、富裕層はいつの時代も、他人と一緒であることを嫌がる傾向があるのだと思われます。

 2000年代、カジュアル化の時代になって、毎日同じ服を着る「究極の普通」、ノームコアというコンセプトが生まれました。イッセイ・ミヤケの黒いタートルネックにデニムというスティーブ・ジョブズ、クローゼットに同じグレーのパーカーが並ぶマーク・ザッカーバーグ。世界を席巻するテック界の巨人を象徴する人物へのあこがれと同調するように、ノームコアはシンプルを愛する若い世代に受け入れられました。

 また、外見の個性を追求する人たちは、インディ路線をひた走りますが、それとてSNS上では、ひとかたまりの個性派として「マス・インディ」と揶揄されるようになりました。

 新しい富裕層、ミレニアル富裕層の中でも突出したミレニアル超富裕層は、個性派の大きな集団、マス・インディにも、ミニマリズムを信奉するノームコアにも分類されたくない。そう思うのも無理ありません。そして、より人数の少ない=希少価値の、オートクチュールというソサエティに流入していくのです。

 オートクチュールの側もミレニアル世代に寄り添い、ハイファッションとストリートファッションのミックスで答えようとする。またホームページではアトリエの動画を流し、連綿と続く職人文化の偉大さへと誘い、しかも丁寧に彼らの母国語で語りかける。

 まさにそこに、突出したミレニアル富裕層が必要としていたラグジュアリーが生まれているのではないでしょうか。全世界に4000人、しかも30代以下に限れば、世界に千数百人程度、毎年リピート購入するのはその半分にも満たない、小さなソサエティです。

 自分の居場所をやっとみつけた、若く、ビジネスや芸能、音楽で成功した、あるいはファミリーの莫大な資産を継承した、突出したミレニアル富裕層。人が出会う場所、パーティ、レセプションなどに出る機会も多く、1着数百万から数千万円、ときに1億円を超えるファッションを抵抗なく購入し、またそれを纏うことで自身の価値を高められ人たち。彼女たちこそ現代のラグジュアリーを牽引する、選ばれし女神たちなのだと思います。

cover photo:Kristine “1953”
original photo:Mark Shaw / mptvimages.com
※写真のイブニングドレスはクリスチャン・ディーオールの1953年秋冬オートクチュールコレクション。モデルは映画監督アナトール・トラ・リトヴァクの妻、ソフィー・マルガ



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