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当代「アラブの大富豪」はどんな人?

NEWS BLOG 2018.05.16

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 ドバイやアブダビなど突出した超モダン都市で急速な近代化が進み、世界の富裕層を集める湾岸諸国。この地域は富裕層が集まると同時に毎年多くの富裕層を生む、富裕層輩出国でもあります。かつてのオイルマネーを背景とした王族中心の「アラブの大富豪」の次代をつくるアラブのビリオネアとは? 6年前の上場来、株価が1650倍に上昇していると話題のNMCヘルス創業者など、当代アラブの大富豪考。

 中国の富裕層レポートを主に提供するハルンレポートが、このほど湾岸地域の起業家富裕層について出した統計によれば、この地域でもっとも富裕層が増えているのは、ドバイ、アブダビを擁するアラブ首長国連邦(UAE)。

 興味深いのは、湾岸地域で成功を収めているビリオネアの半数は移民であり、とくにインドからの移民が多いということ。もともと湾岸諸国の富の源泉は石油。サウジアラビア、クエート、オマーンなどの国々は、ここ数十年産油国として潤い、彼の地の王族たちは桁外れの富を蓄えてきました。

 ハルンレポートでは、昨年初めてこの「湾岸の起業家ビリオネア(資産10億ドル超)」リストを作成しましたが、ビリオネア輩出国ナンバーワンはUAEが圧倒的1位(全体の61%・22人)。2位はサウジアラビアで9人。3位のオマーンはわずか3人、とUAEは他に対して大きく水を空けています。

 つまり「起業家富裕層」でしぼると、オイルマネーを富の源泉とする王族に象徴される「アラブの大富豪」はリストには挙がらず、ここ数十年この地域で、新しいビジネスを立ち上げてきた富豪たちの顔が見えてきます。それはどういうタイプの富裕層なのでしょうか。

 もともと小さな漁村だったドバイやアブダビに大きな転機が訪れたのは、1971年UAEが誕生したこと。それ以降、UAEは国を挙げて、原油依存経済からの脱却に取り組み、80年代には経済特区、大型港湾の建設、エミレーツ航空の就航、とグローバルに開かれた国造りの布石を打った。それが21世紀の急速な発展につながっています。

 こうしてみると、何もない砂漠の土地に、摩天楼が立ち並ぶ世界に冠たる金融センターと、ラグジュアリーリゾートを作りあげてきた事業家たちこそが、桁外れの富を蓄えたビリオネアたちという構図が見えてきます。 現在湾岸地区の起業家ビリオネア人口は36人。昨年から9人増えています。このうちUAEのビリオネアは26人、なかでもドバイ在住者は16人と突出しています。

 驚くのはインド出身者が多いこと。36人の起業家ビリオネアのうち36%が移民で、インドからの移民は13人。イギリスが2人です。



 以下は湾岸の「起業家ビリオネア ベスト10」リストより

1. Majid Al Futtaim(マジッド・アル・フッタイム)  100億ドル MAFグループ(UAE) 不動産と小売のコングロマリットMajid Al Futtaimグループ・オーナー創業者。湾岸地域だけでなくアジア・アフリカ地域でも事業を展開している。ドバイのショッピングモール、モール・オブ・ジ・エミレーツ(中東で2番めの規模)オーナー。ドバイ在住。

2. Mohamed Al Amoudi(モハメド ・アル・アモーディ)  78億ドル Corral(サウジアラビア) エチオピア系サウジアラビアのビリオネアビジネスマン。1946年エチオピア生まれ。エチオピア・ナンバーワンの富豪であり、世界の黒人の中で二番目の富豪である。建設業と不動産で財を成し、金鉱採掘、農業ビジネスなど幅広い事業を展開。

3. Mohamed Bin Issa Al Jaber(モハマド・ビン・イッサ・アル・ジャバー) 62億ドル Mbi Inernational(サウジアラビア) 1959年サウジアラビア生まれのビリオネアビジネスマン、慈善家。ホテル王であり、オーストリア、フランス、ポルトガルにラグジュアリーホテルJJW ホテル&リゾーツを所有。ほかにも多くの事業を展開する。住居はパリ、ロンドン、ウィーン、シッダ(サウジアラビア)。

4. Micky Jagliani(ミッキー・ジャリアニ) 55億ドル Landmark(UAE) 1952年クウェート生まれのインド系ビリオネア。学生時代はマドラス、ムンバイ、ベイルートで過ごす。卒業後ロンドンを経てバーレーンに戻り兄の経営する店をベビーショップに業態を変え後を継いだ。10年間で6店舗を展開するも湾岸戦争を機にドバイに移住。Landmarkを設立。現在は中東と東南アジアでアパレル、靴、家電、化粧品、ベビー用品、家具を扱うほかホテルも経営。従業員4万5000人。UAEにベースを置く。

5. MA Yussuf Ali MA (ユスフ・アリ) 50億ドル LuLu(UAE) 1955年生まれのインド系ビリオネアビジネスマン。インド・ケララ州出身。ショッピングモールのLuLuグループ・インタナショナルオーナー。インドで学位を取得した後、1973年父方の叔父でLuLuグループ創設者が住むアブダビへ。グループの輸入と卸売のビジネス拡大に貢献し、1990年代にはスーパーマーケットのLuLU・ハイパーマーケット創業。同グループは現在4万人の従業員を抱える。

6. Hussain Sajwani(フセイン・サユワニ) 43億ドル Damac(UAE) 1952年生まれ。父は貿易商で中国から時計、ボールペン、シャツなどを輸入していた。国費留学で米ワシントン大学に留学。2002年不動産開発会社、DAMACプロパティーズを創業。ヴェルサーチとFENDIが内装を手がけるラグジュアリーアパートなど、ラグジュアリー物件の開発も多い。2015年ドバイ証券取引所に上場。Forbes2018でアラブ系第4位の富豪にランキングされている。ドバイ在住。

7. Suhail Bahwan(スハイル・バーワン)  37億ドル Suhail Bahwani(オマーン) 1938年オマーンのスール生まれ。父から受け継いだ、小規模な帆船貿易でオマーンとインドでの貿易の仕事を始める。1965年首都マスカットへ。スークで店を開く。’68年セイコーの地域販売権、トヨタの地域販売権を獲得。2016年六男のアマル氏にほとんどの権限を移譲している。既婚。15人のこどもと現在もマスカット在住。

8.Abdullah Al Rajhi (アブドラ・アル・ラユヒ)  37億ドル Abdullah Al Rajhi(サウジアラビア) 1957年、4人兄弟のスレイマン、モハマド、サレとともにAl Rajhi Bank創業。現在世界最大のイスラム系銀行である。既婚。子供なし。

9.BR Shetty(BRシェティ)  36億ドル NMC(UAE) 1942年インド生まれ。インドで製薬を学び、市議会で地域市民の健康とQOL増進のための仕事に携わっていた。1973年UAEにわたり、ニューメディカルセンターヘルス(NMCヘルス)を設立。その後分野を広げ、医薬品、金融サービス、小売業、広告、情報テクノロジーで事業を行う。最近NMCヘルスの株価が6年前の新規公開から1650倍に上昇していると話題になった。

10.Ravvi Pillai(ラヴィ・ピライ) 35億ドル RP Group(UAE) 1942年インド・ケララ州の農家に生まれる。大学時代に借り入れをして技術契約の仕事を始める。1978年サウジアラビアに渡り貿易を始める。2年後建設業に身を投じ、Nasser Al Harjiを設立。これが現在従業員7万人を超えるRPグループの母体となった。南ケララ州のショッピングモールRPモール・アット・ケラムはピライがオーナーである。



cover photo: dubai_villa  ※写真はイメージです。

参考サイト:cpp-luxury



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