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クリスチャン・ルブタンのレッドソール・マーケティング

NEWS BLOG 2018.01.24

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 洋服や着物の裏地に凝る人は過去多数存在していたとしても、靴の裏(ソール)に神経を使い、そこにアイデンティティを求めた人はクリスチャン・ルブタンの登場まで、誰もいなかったはず。靴底は普段見えないばかりか消耗する部分であって、「ハレ」と「ケ」で分ければ、「ケ」の最たるパートです。

 ですから、そういう今まで誰も気づかなかったところに気がつき、新しいマーケットを作ったという点で、クリスチャン・ルブタンという人は優れたマーケターです。Referral Candy BLOGが伝えていますので、少しコメントをつけ加えながらご紹介します。

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 面白い商品を作ろうと思ったら、みんなが夢中で掘っている金鉱をさけて掘るべきだろう。アップルは電子機器といえば黒かグレーがあたりまえの時代に、白いiPodと白いイヤフォンを颯爽と世に送り出した。

 クリスチャン・ルブタンの赤いソールのハイヒールも同様。あれが出た当時、靴底に注意を払う人などいただろうか。どうせ汚れてしまう靴底なのに。しかし、このディテールへのこだわりが、ルブタンを今日の地位に押し上げている。彼が赤いソールのハイヒールでデビューした初年度(それはブティックをオープンした翌年1993年だった)、販売した靴は200足に過ぎなかった(とは言え最初の顧客は、モナコのカロリーヌ公女である)。そして2012年、彼は70万足の靴を販売しているのだ。

 なぜここまで大きく、影響をもつようになったのだろう。

1.セレブの影響 ― スタイルアイコンが広めれば、ファッショナブルになる

 セレブリティはたいていインフルエンサーである。ルブタンは、彼の靴が大好きなセレブたちの口コミで、とてつもない広がりを見せた。カロリーヌ公女に始まり、マドンナ、サラ・ジェシカ・パーカー、アンジェリーナ・ジョリー、パリス・ヒルトン・・・、その時代の輝かしい、錚々たるセレブリティたちが、赤いソールがちらちらと覗くルブタンをエレガントに履いてみせ、メディアに登場するたびに、憧れは増幅されていった。

2.有名カルチャーとのコラボ - シンデレラの靴に採用

 2012年、ルブタンはディズニーからの要請で、ブルーレイ版『シンデレラ・ダイアモンド・コレクション』発売記念として、現代のシンデレラの靴を世界限定20足でつくることになった。 ディズニー、そして「シンデレラの靴」という伝説に乗ることで名声は不動のものになった。

3.クロスメディアでの拡大   アイフォンアプリ ルブタナイズ 

 2012年にローンチしたアイフォンアプリLouboutinizeは、お店を見つけたり、ウィッシュリストをつくったり、ビデオを見る、新コレクションのチェック、ルブタン製品のヒストリーを知ることなどができる。伝説はさらにSNS空間を通じ、拡散した。

4.ブランドが確立したら関連商品を売る

 関連商品の販売に乗り出すのはリスクのあること。誰もが確信がもてるまで、なかなか一歩前に踏み込めないもの。

 ルブタンの有名な赤い靴底(レッドソール)は、アシスタントのマニュキュアの色からインスピレーションを得たという。工場で完成した靴にいまひとつ満足しないルブタンは彼女の鮮やかな赤いマニュキュアを見てひらめき、その場でハイヒールのソールにマニュキュアを塗り始めた。であれば、ルブタンブランドのマニュキュアを販売するのは、完璧な商品戦略の打ち出し方と言うべきである。

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5.インスタグラムに質の高いコンテンツを投稿する

 リポストされることが非常に多い、ルブタンのインスタグラムアカウント@louboutinworldのフォロワーは940万人。ルブタンはソーシャルメディアのキャンペーンが評価され、靴のマーケットで最も影響力あるニュースを発信したことが讃えられ、2015年フットウェアニュース・マーケター・オブ・ジ・イヤーに選ばれている。



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 このブログの冒頭にも書かれているように、誰もがガジェットは黒モノという固定観念にとらわれ、黒の輝きや風合いを競い合っている時に、アップルは真っ白いアイポッドを世に送り出し、爆発的人気を得た。ルブタンは靴底という、靴という商品の中で(文字通り)もっとも光が当たらないパートをマニキュアの赤に染めることで、それをブランドアイコンの座にまで押し上げた。

 ヒールを大胆に高くし、歩くとソールの赤が小気味よく覗くようにデザインしたことで、むしろソールの覗き具合こそが靴の世界観の中心を占めるまでになった。

 あえて人の行かない道を進み、あえて人に見えない所にこだわり続ければ、そこに輝く宝物があるかもしれないという好例ですね。



Cover art:Christian Louboutin
photo:https://ja-jp.facebook.com/christianlouboutin/

参照サイト:Referral Candy



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