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ダイヤモンドとミレニアル

NEWS BLOG 2017.07.28

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 昨年インタビューしたある御婦人は「10億円持っていくのに現金だったらショッピングバッグ10袋でしょ。だけどダイヤだったら、こんなペンダント首からぶら下げて、それでニューヨークでもどこでも行って、またお金に替えたらいいのよ。」そんなことをおっしゃっていました。

 また随分昔の話ですが、ある王家のお嬢さんがアメリカ留学前に、お国に何かあったときのために、とお母さんがブラウスの内側に大粒のダイヤを縫い付けておいた。すると彼女の留学中にクーデターが起こり、自国に帰ることが許されなくなった。それで彼女は、そのダイヤモンドを売ってアメリカで生活をしたという話。

 そんなふうにある一定レベル以上(あるジュエラーの方によれば5千万円以上)のダイヤモンドは、もっとも軽い、携帯できる資産。そのダイヤモンドを今、世界ではミレニアル世代に向けて販売しようとしているようです。cpp-luxuryrが伝えています。

 それによると、実際にデビアスが昨年発表したレポートによれば、アメリカ、中国、インド、日本のミレニアル世代は2015年に260億円のダイヤモンドを購入していて、すでに市場は盛り上がっている。ミレニアル世代といえば一般にはサスティナブルで、ミニマリズムを追求していて高級消費を嫌うと言われるのに、そんなものかなと思いましたが、これは中国のミレニアル世代の勢いによるところが大きいのではないでしょうか。

 そしてもうひとつ面白いのが、サスティナブルなミレニアル世代はラボで作られたダイヤモンド、つまり人工ダイヤにエシカルな価値を見出し、すすんで購入する傾向がある。また人工ダイヤのスタートアップも出てきたということ。この状況にに危機感を抱いたダイヤモンド生産者協会は「本物は貴重。本物はダイヤモンド」というキャンペーンを開始。

 すると今度は国際NGOのGlobal Witness が、ミレニアル世代はダイヤモンドが本物かどうかを問うのでなく、その供給源を問うべきだという声明を発表。レオナルド・ディカプリオ主演の「ブラッド・ダイヤモンド」により広く知られることとなった「紛争」ダイヤモンドの問題を訴えています。記事はこちら

 確かにサスティナブルという話であればラボで生まれたダイヤもいいのでしょうが、エシカルな消費となると「紛争」ダイヤは避けたほうがよい。そして紛争を維持するためのダイヤ取引でなく、ダイヤモンドが採掘される地域のコニュニティを豊かにする事が保証されたダイヤの購入に関われるとなれば、ミレニアル世代の心に響くものになるように思います。

 人工ダイヤも「紛争」ダイヤも、宝石の王者ダイヤモンドの価値を毀損するものですが、もし真に自然のもので、且つエシカルな流通で消費者にまで渡ることが証明された何らかのプルーフが発行されるようになったとすると、ダイヤモンドには、これまでに無かった価値が加わり、そういう真正ダイヤモンドの価値はかえって上がるように思います。裕福なミレニアル世代にとっても、サスティナブルでエシカルな消費ができて、しかも資産性のあるダイヤモンドというものが、これまで以上に輝きを持ったものになるのではないでしょうか。



photo: Steve Jurvetson ”Diamond Age”



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