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そのファッションは誰のためのもの?

NOBLE STATE NEWS 2016.09.26

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 最近のインタビューで、洋服はもう日本で買わなくなった。それはブランドは日本では若い人に照準を合わせていて、サイズがもう細すぎて自分たちには着られない。そういう物をふつうに買える私たちは、もうもっと太っているというのにね、わかっていないのよ、という話をされた方がいました。

 それでそのTさんはパリやニューヨークの本店に行ったり、トランクショーに出かけていって、ジャストのサイジングでつくってもらって日本に送ってもらうのだそうです。

 別のIさんもやはりサイズが合わないので、自分のものは妥協してサイズの合うものの中から探して買い、気に入った素敵な服はだいたいサイズが無いので娘さんのサイズを買ってプレゼントするんだそうです。

 お金をポンと払える層のマダムたちの体型とデザイナーの思惑がなんかちぐはぐになっている?そんなことを考えていたところワシントンポスト紙に、ファッションコンサルタントでTVのコメンテーターなんかもやっているティム・ガンさんが、同じ趣旨のことを書いていました。

 曰くティムさんがあるメーカーでCCO(チーフクリエイティブオフィサー)をやっていたとき、ファッションショーのためにあらゆるサイズと体形、年齢の女性をモデルとして集めたといいます。

 そうすることでショーに来た人たちは、じゃあ自分はどうすれば最高に見えるのかということがわかる。それを教育というか教えてあげることをミッションにしていたそうです。そして12号サイズ以上の女性たちはみんな、どうすれば自分がよく見えるかというソリューションを探しているとわかった。なのにデザイナーたちはなぜ自分たちを無視し続けるのかと彼女たちは不満を抱いている。

 何十年にもわたってデザイナーたちは、ほとんどの人が絶対に手に入れられない体形のモデルたちに照準を合わせて服をつくってきた。185センチ50キロのモデルたちが輝いて見えるように、そこから逆算してシルエットをデザインし、生地を選び・・・。

 これはデザイナーがランウェイでプレゼンするための「作品」としてのファッションと、お金持ちのマダムたちが自分をもっと美しく見せてくれるために必要としている「贅沢な洋服」が、あまりにも乖離してしまったということだと思います。いったい誰に向けて作ってるのか。そこが限りなく曖昧になってきている。

 こんなにポテンシャルのある市場なのにデザイナーたちはそこにシフトしない。それでティムさんはデザイナーたちになぜ<プラスサイズ>の女性に向けて作らないのか尋ねてみたのだそうです。すると同じく返ってくる答えが「彼女たちには自分の作品を着てほしくない」。それは自分の作品がよく見えないからということでした。

 ある種の建築家が自分の作品にこだわるあまり、とてつもなく住みにくい家をつくってしまうように、作品としての服にこだわるあまり、高価な洋服を買える層のマダムたちのリッチなマーケットを失ってしまっている。そんなふうに思えます。

 どんなサイズ、体型の女性もファッションによってもっとよく見えるようになる。それがデザイナーの腕であるとティムさんは結んでいます。私も日本の富裕層マダムたちのお話を伺うにつれ、これは本当に変わって欲しいところだと思います。この市場のインパクトはすごいと思うからです。



参照サイト Washington Post

cover photo: soctech “Woman using mobile phone, Shanghai”



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