アートの世界 〜おすすめ体験 画廊巡り〜

末木 佐知 2019.05.24
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銀座の東急プラザ銀座のとなりにある「銀座柳画廊」は、日本の美術業界を発展させようと真剣に取り組んでいる画廊である。副社長の野呂洋子氏は、IBMの将来有望なキャリアウーマンだったのを一転、銀座柳画廊に嫁いだ有能な女性。彼女は、古き良き伝統の画廊業界の異端児的扱いをうけながらも、美術業界のために熱心に活動している。著書も3冊ある。



さて、洋子氏が行った銀座の画廊の世界を大きく変えたイベントが「銀座の画廊めぐり」だ。日本人が世界で一番、美術館に行く国民であるにもかかわらず、美術品を買わない国だという事実を知ったから、まず画廊を知ってもらうことを考えたのだ。画廊めぐりは、洋子氏がガイドとして銀座の画廊を案内するサービスだ。ご主人や老舗の画廊等からの反対もありながらも2009年に実施。結果としてマスコミの取材を受けるほど好評だった。「美術業界が厳しい今だからこそ積極的に動かなくては、いけないと実感した」という。

その流れで、洋子氏は小中学校の美術教育に懸念を感じ積極的に動きはじめた。「美術は継承していくもの。次の世代への教育は必須で日本の社会にとっても重要」と感じ、子供向けの画廊めぐりや、ボランティアスタッフとして画廊の仕事を学んでもらうなど、「大人の世界」ととらえられてきた銀座の画廊を広く子供達に知ってもらうように動いている。その流れで、隣接している「泰明小学校」の美術の先生に相談をし、3年生を対象に実施した。2クラス全員を連れていくのには、東京中央新ロータリークラブや保護者の方のご協力が必要であるが、地域との交流という違うメリットもあった。もちろん、子供たちには、学校という枠の中だけでなく外を見てもらうこと、そして、銀座の街として子供たちを育てるということは、アートを身近に感じてもらうと同時に、教育につながると実感した。



私がかつて運営していた恵比寿の学童保育では、同年に、洋子氏と相談の上「画廊めぐり」を夏休みのイベントとして導入し、引率で参加したことがある。子供達の反応は面白かった。とにかく絵をみる目が純粋だ。大人の場合は、作者を見てから「シャガールは素敵ね。」などと言い、そこで判断する傾向にあるが子供には関係ない。画廊を5軒くらいめぐって最後に感想を聞いてみると
「僕は馬の絵が好きだった。」と。

どこの画廊でも一番いいと思った絵が馬だったそうだ。そんなピュアな感想とともに、自分の好きな絵のタイプに気づいたり、もっと絵が見たくなったり。中にはあとでお母さんを別日に連れていった子もいたくらいだ。
「画廊って無料でいける美術館だね」 って、冷静に言った子供がいた。画廊は実は、気楽に入れる場所ということを、身近にした企画だ。



洋子氏は、「美術は知的なお遊びです。経済力がある人は、高級車やブランド品などを買うのは簡単かもしれません。美術は、歴史や内容を理解する必要があり、絵画の価値、金額は、わかる人しかわからないのです。その奥ゆかしさが本来の、富裕層の余裕のお金の使い方なのではないでしょうか?」と語る。絵画は投資の対象だけではない。知性と教養、本物をみる目を養って、絵画の世界をみてみるのはどうだろうか?



柳画廊HP イベント
http://www.yanagi.com



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