ティアラの似合う女性

Mimi 2018.12.03
 今年訪れた数々の美術展の中で、唯一2度見に行った展示がある。三菱一号館美術館で開かれた、ショーメの展覧会である。私には宝石所有の願望はない。失くし物の達人の私は、そんなに高価でちっちゃなお宝を失くして、おろおろ探し回るよりは、最初から持たない方が気楽なのだ。  だが、きれいな物を見るのは大好きだ。ショーメの名を知ったのも、ずっと以前のこと。宝石好きの友人の両手の指に輝く、いくつもの凝ったデザインのダイヤの指輪の中でもひと際、手が込んでいてカッコいいと思ったのがあり、フランスのジュエラー、ショーメのものだと教えて貰った。

 三菱一号館でのショーメの展示方法はそれだけで芸術作品だった。古い時代から部屋ごとに、違ったテーマの豪華なしつらえである。ナポレオン1世と皇妃ジョゼフィーヌのお抱えジュエラーだけあって、戴冠衣装を身に着けたナポレオン一世やジョゼフィーヌの大きな絵とともに、絵に描かれた宝石の本物が目の前にあるのだから、感激である。ジョゼフィーヌが愛した麦の穂を模した宝石は、皇妃としての気品をそれひとつで象徴しているかのようだ。

 紫陽花のガク一つ一つが繊細なダイヤモンドで出来ている2百年以上も前の作品には、ヨーロッパと日本の交流の歴史を感じる。当時は、異国日本からもたらされたばかりの、大変珍しい花だったのだろう。そういえばシーボルトも日本から紫陽花を持ち帰って奥さんの名前、オタクサと名付けたんだっけ。

 歩を進めて行くと、突然広い空間に出た。ずらりと両側にティアラが並んでいる。右手の壁には、ティアラの原寸大の型。注文する人は、このティアラを自分の頭に載せて見て、どれにするのか決めるのだ。

 



 左側の壁には、ショーメがこれまで作った代表的なティアラがガラスケースの中に展示されている。どれも息をのむほど美しい。





 宝石所有の願望がない私でさえ、貰えるとしたらどれにしようかな、などと考えてしまった。私はパンジーが好きなので、パンジーのティアラがお気に入り。だが、たとえ貰えたとしても、飾って見ているだけだろう。頭に載せるなんておこがましい。



 その時、ふと、このティアラが似合う人は誰かしら、と思った。「ローマの休日」の中のオードリー・ヘップバーン? 日本では? その時、すぐに頭に浮かんだのは、絢子さまだった。

 絢子さまには、息子の結婚披露宴にいらしてくださった時お目にかかった。この披露宴には、あでやかな着物を着たお嬢様方が大勢いらして、大変華やかだった。その中でも絢子さまの豪華な着物姿は本当に魅力的だった。ただ、椅子に座っていらっしゃるだけでも、あたりに気品が放射される雰囲気なのだ。それでいて、外国からのお客様方にも、親しみ深く、また流暢な英語で接してくださった。

 イタリアから来たアンドレアが、「昨日はお目にかかる予習をしてきたのです。」と絢子さまに話しかけた。私が結婚式前日、彼を上野の国立博物館に案内し、高円宮様の根付のコレクションの部屋を見せたのを「予習」と言ったのだが、そんな話を気楽にお話できる雰囲気なのだ。

 そういえば、皇族のお嬢様たちは二十歳になるとティアラを作って貰うんだって、と息子が話していたことがあった。ロイヤルファミリーの象徴であるティアラを頭にいだくことで、責任の重さをどっしりと感じるに違いない。

 皇居に住み、24時間護衛付きで生活し、常にノブレスオブリージュを心に抱いて生活するからこそ、自然に身に着く気品であるのだろう。

 このように、美しくて、優しく、教養溢れる女性と結婚なさる方は、どんな方かしら、などと思ったことだったが、この度めでたく結婚なさった。テレビでお幸せなお二人を拝見したが、心よりお祝いを申し上げたい。だが、皇籍を離れられたこれからも、絢子さまは、ティアラの似合う絢子さまであり続けられるのだろう。
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